こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」23
● 失敗はとがめず暖かくはげます
ある小学校での父母参観日のこと。3年生のクラスで、教師が子どもたちに問題を出して手をあげたA少年に答をいわせた。しかし、答はまちがっていた。そこで、ほかの子どもたちに答をいわせて、正解へみちびいた。A少年は、参観に来ている親の目を気にして下をむいた。ところが、このとき、教師がすばらしいことを言った。
「A君の答はまちがっていましたね。でも、A君がまちがった答をいってくれたおかげで、みんなが、もういちど考えなおしたり、ちがった答をいってくれたりしたので、ほんとうの答がみつかったんだ。A君ありがとう」。これを聞いたA君は、ぱっと顔をあげて、いっぺんに明かるい表情になった。そして、参観に来ていた父母みんなが、この教師のすばらしさをたたえあった。
この教師は、40代半ばの男の教師でしたが、まちがった答をいってしまった子どもへの暖かい思いやり、ほんとうにすばらしいではありませんか。
多くの親は、この教師のような思いやりの心を忘れているのではないでしょうか。失敗は失敗として、とがめてしまいます。もしも同じ失敗をくり返そうものなら、つい 「どうして同じことをまちがえるの」 などと大きな声をだしてしまいます。失敗した子どもの心は、親から叱られるまでもなく沈んでいます。だったら、その心の沈みに追いうちをかけるのではなく、失敗をのりこえる力を与えることこそ、たいせつでしょう。
失敗して沈んでいる心を救いはげましてやりながら、失敗をおそれない心をつちかわせていく──これこそ、叱ることにまさる教育だと思うのです。