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ワールド図書館(8) 「北ヨーロッパ」 巻末解説

前日(3/28号)に続き、25年ほど前に初版を刊行した「子どもワールド図書館」(38巻) 第8巻「北ヨーロッパ」の巻末解説と、その後の変化を記した補足事項を記します。

「北ヨーロッパ」 について

[スウェーデン] スウェーデンはスカンジナビア半島の南東部を占める立憲君主国です。16世紀にデンマークから独立して以来、いくたびかヨーロッパ諸国との戦乱にまきこまれてきました。しかし、1809年、ナポレオン戦争で敗れたのを契機に、新憲法を採用して市民国家的な体制へすすみ、以後、中立、非同盟の平和政策を堅持してきました。人々は、第2次世界大戦中の中立維持を民族の誇りとしています。
スウェーデンは、世界でも最もすすんだ工業国のひとつですが、工業を本格的に発展させたのは、19世紀の後半に入ってからです。急速な経済成長をとげることができたのは、良質の鉄鉱石や木材、水力などの資源と、高い教育水準に依拠しているといわれます。
教育とともに、生活水準もきわめて高い国です。世界の範たる社会保障制度は、名実ともに完備し、国民の暮らしをゆとりあるものにしています。人々はきびしい自然条件のなかで、住み良い社会を建設し、自由な気風を育てあげてきましたが、最近は、福祉がゆきわたったがための新しい悩みが、クローズアップされてきています。

[ノルウェー] スカンジナビア半島の北西部を占めるのがノルウェーで、*{ソ連}、フィンランド、スウェーデンと国境を接し、ノルウェー海、北海にのぞんでいます。西岸に発達するフィヨルドが、山地の奥深くまでくいこんでいるため、ノルウェーの海岸線は2万7000kmもの長さに達しています。フィヨルド内は波が静かなので、天然の良港をなし、ノルウェーの海洋文化の発達に大きく寄与してきました。ノルウェー人の海との結びつきは、独特の龍頭船を操って北大西洋上に雄飛し、歴史的に大きな役割を果たしたバイキングの時代にさかのぼります。現在も、海運業や造船工業など、この国の経済をささえているものは海とつながっています。古くから産業の中心をなしていた漁業は、トロール船団を主体とする遠洋漁業への転換が図られ、個人経営の小規模な沿岸漁業から大きく発展しました。
*{1991年のソ連解体により、ロシア共和国}
豪胆で冒険心に富む精神土壌をもつノルウェーは、南極点に到達したアムンゼンや、グリーンランド横断をなしとげたナンセンなど、世界的な極地探険家を生みました。バイキングの血を引くノルウェー人は、生活力がおう盛で、合理的かつ高度の政治感覚を身につけた国民です。西欧陣営に属する政治形態のなかで、高水準の生活、文化を享受しています。

[フィンランド] フィンランド人は、2世紀前後に、南方から現在の地に移住してきたといわれますが、以来、スウェーデンやロシアなどの脅威にさらされ、苦難の歴史をたどってきました。
ロシアの統治下にあったころ、東部のカレリア地方に伝わる口承詩『カレワラ』が、学者のレンロートによって採集、構成されました。1849年に50章の大叙事詩として発表されるや、とびついてむさぼり読んだ国民は、著しく民族意識を鼓舞され、独立への気概を高めていきます。そして1917年、ロシア革命に乗じて独立を宣言し、共和国になったのです。その後も、国際関係の緊張により、たびたび他国からの侵略を受けましたが、国民は強い結束のもとに、いばらの道をきり開いてきました。
フィンランドは、国土の71%が森林に覆われ、およそ6万個の湖沼が散在する森と湖の国です。経済の基盤は資源豊かな林業ですが、第2次世界大戦後は、金属、造船を中心とする重工業化が推進されました。工業面では後発国であるため、生産品目やデザイン面に特色をもたせ、国際競争力の確保につとめています。

補足事項
EU(ヨーロッパ連合)には、フィンランドが1994年に加盟し、通貨もユーロを導入。スウェーデンは1995年に加盟しましたが、通貨はスウェーデン・クローナのままです。
ノルウェーは、国民投票で否決されたためEUには未加入です。

投稿日:2007年03月29日(木) 09:20

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)