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ワールド図書館(1) 「フランス」巻末解説

子どもワールド図書館の巻末解説に感銘

さきごろ、いずみ通販子どもカタログ(2007年春号)でベスト3に躍進した「子どもワールド図書館」の、内容はもとより巻末の解説に深く感銘したという、うれしいお便りを兵庫県のIさんからいただきました。

「これからの時代は、世界の国々と仲良くしていかなくてはならない時代だと思い、小学校の1年の息子のために、子ども向けに世界の国をわかりやすく紹介している本を求めて、書店を何軒かまわって探してみました。昔とちがって、きれいで見やすい世界地図の本がたくさんあります。それから、世界中の国ぐにへの旅行ガイドブックはとても充実していると思いました。ところが、子どもに、それぞれの国はどんな国民性でどんな歴史をたどってきたのか、どんな人物がその国に生まれたのか、すぐれているところはどんなところなのかといった点などを紹介している本はどこにも見当たりませんでした。大人向けの本を買って、子どもにかみくだいて説明する他には方法がないかなと思っていた時に、いずみ書房の最新カタログが送られてきました。すぐに、『ワールド図書館』というのがあること、最新の補遺版が添えられているというのを読んでこれだと思いすぐ注文しました。想像していた以上のすばらしいシリーズだということに気がつきました。毎晩のように、子どもといっしょに世界旅行を楽しんでいます。イラストがふんだんにあること、簡潔な文に好感が持てるだけでなく、私には巻末の解説がとてもすばらしく印象的でした」

このシリーズは、いずれ、いずみ書房のホームページ・オンラインブックにアップする予定ですが、だいぶ先になりそうです。そこで、しばらく「ワールド図書館」の各巻の巻末解説を紹介してみることにしましょう。

「フランス」 について

フランスは、ヨーロッパの西にある共和国です。
ひろさは、約55万km2で日本の1.5倍ほどですが、人口は日本の約半分くらいです。総面積の64%が平野か小高い丘で、土地はたいへん肥えています。気候も日本の東北・北海道より北に位置しているわりには、遠く沖合に流れるメキシコ湾流(暖流)の影響を受けて、全般的に冬もあたたかです。とくに地中海沿岸は1年中温暖で、避寒に適しているため冬でも観光客でにぎわいます。
フランスは、カトリックの国(全国民の80%)です。全国のいたるところに古い教会がみられ、行事もカトリック系のおまつりが多く、休祭日も宗教的なものがたくさんあります。学校でも、カトリック精神のもとにきびしい宗教教育がされていて、そのためフランス人は、冒険や無秩序をきらう、中道を行く傾向が強いようです。しかも、フランス人はひとりひとりの自由を尊び、人間の尊さを守って明るいすぐれた文化をつくりあげてきました。たくさんの芸術家や科学者を生み、まさにフランスは、文化的には世界一級の先進国だといえます。
フランスは豊かな国でした。19世紀の時代に海外に手をのばし、侵略、投資を行って、実に本国の20倍近くもの広さをもつ植民地をつくりあげたのです。植民地との思うがままの貿易によって利益を得、フランスはたいへん栄えました。ところが20世紀に入るとヨーロッパの大国は、外国に領土を持とうとするいわゆる帝国主義の国家になり、植民地のとりあいをめぐって2度も世界大戦をおこしました。
第1次世界大戦では、国土が戦火にさらされ、生産はおとろえ、たくさんの人々を戦場で失いました。戦争には勝っても、その損害のつぐないを相手のドイツからとれませんでした。この時のドイツは、国民が飢えの危険にさらされるという状態だったからです。おまけに、こうした戦争の痛手がまだすっかりなおりきらないうちに第 2次世界大戦がはじまりました。たちまちフランスはドイツ軍にふみにじられ、国の大半を占領されてしまったのです。でも、自由を求めて力をあわせる人々はゲリラ部隊をつくってドイツ軍を悩ませました。そしてアメリカ、イギリスの連合軍がドイツ軍をやぶって平和がきました。ところが長い戦争の後に残ったものは、荒れはてた国土とものすごいインフレでした。おまけに、これまでフランスをささえてきた植民地では、独立運動がはげしくなったのです。
レバノン、シリアの独立につづいて、ベトナム、ラオス、カンボジアが相ついで独立しました。1962年には、これまで本国の一部と考えてきたアルジェリアも独立し、ほしいものは植民地から安く持ってきて、本国でつくったものを植民地に高く売りつけるという勝手なことはできなくなったのです。
自分の力で自分をささえきれなくなってしまったフランスは、戦後、大きな力をもつようになったアメリカの援助を得て国の建てなおしをはじめたため、軍備その他の面でアメリカの言い分を聞かねばなりませんでした。しかし一方、国を建てなおすためにはひとりひとりの自由を大事にしながら、みんなが力をあわせ、ひとつになって進むことが大事だと考えるようになって、数回にわたる3〜5か年計画のもとに成果をあげています。さらに、ヨーロッパ各国と共同してEEC、ECといった経済協力にも積極的に力を発揮しています。
国の自由、人民の自由、個人の自由……フランス人は、自由を愛する国民です。そしてこれからも、自由を維持するために歩みつづけることでしょう。

補足事項
EC(ヨーロッパ共同体)の創立メンバーの1国であったフランスは、1993年にEU(ヨーロッパ連合)になってからも、中心メンバーとして指導的役割をになっています。通貨も、2002年に、フランス・フランからユーロに完全に切り替わりました。

投稿日:2007年03月07日(水) 09:49

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)