こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」16
● 言い聞かせるより聴いてやること
「子どもとのコミュニケーションが、きちんと成り立つための障害の最たるものは、話さないことではなく、聴かないことなのです。子どもが現に語りかけていることを聴けるようになるのは、なかなか、むずかしいものです。子どもの言いまちがいを訂正したり、知識優越者であるように振舞うことを親自身が卒業し、子どもの言葉をさえぎらずに、子どもが胸のうちをさらけだすのを見守るのは、やさしいことではありません。娘が緊急事態だと思ったことを、まわりくどくはあっても熱心に話しているときに、母親が、電話をかけるから、髪を乾かすからなどとにそれをさえぎったとしたら、それは、娘の額に平手打ちをくわせたも同然ではないでしょうか。さらに恐ろしいことに娘は、自分にとってどんなにたいせつな問題でも、母親にはたいしたことではないと、思いこむことになるのです」
以上は、岩波新書の 「10代の子を持つ親の本」 に記されている一文です。この本はアメリカ人が書いたものの翻訳ですが、子をもつ親への警鐘は、アメリカも日本も、なんと共通していることでしょう。
考えてみれば、日本の親は、子どもに言い聞かせる口はバカでかいものをもっています。ところが、子どもの言い分を真剣に聴いてやる耳は小さなものしか持っていません。「父親も母親も、権威を嵩にきた張り子の虎」 が多いのです。子どもは親に、自分を認めてもらいたいのです。言えばしかられそうでも、ほんとうは、親に話したいのです。
親は、人間として尊敬される権威を保ちながら、子どもには人間らしい友であること──これがしつけにのぞむ親の最大の条件のようです。