こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」17
● 他人への思いやりのたいせつさをしっかり語る
このごろの子どもは、人を疑いすぎます。たとえば、知らない子どもに外で声をかけると、自分たちが2人か3人、あるいは集団のときは話に応じてくれても、ひとりのときは、ほとんど口をきいてくれません。口をきくどころか、こちらが近寄って行くだけで、足早に逃げだす子どももいます。きっと、親から 「外で、知らない人に声をかけられたら、注意するのよ。子どもをだます悪い人が、たくさんいますからね」 と、いましめられているのでしょう。
これは、社会に犯罪が多い現実からすれば、むりもないことかもしれません。しかし、だからといって、あたまから人を疑ってかかることを教えるのは、どんなものでしょうか。
知らない人について行ってはいけないこと、知らない人から物を買ってもらってはいけないこと──などを、守るべきこととして教えておくのは、のぞましいことでしょう。しかし、すべての人への警戒心をうえつけるようなことは、正しいみちびきではありません。
世の中が平和であるためにもっともたいせつなことは、人と人とが信頼しあうということです。人を信頼し、人に信頼されるということから、他人への思いやりが生まれます。人を信頼しない、人に信頼されないところには 「愛」 は生まれません。
わが子に、人を信頼しないようにしむけていながら、その裏で 「人に信頼されるような人間になるのよ」 と言ってきかせているお母さんがいます。これは、むちゃというものです。
社会や人にだまされないようにということは、社会や人を信頼するなということではありません。子どもたちに、信頼とはなにかを、正しく教えることがたいせつではないでしょうか。