こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 10
● しつけ糸をとってあげよう
「しつけ」 という言葉には、「着物の縫い目がととのうように、仕立てがくるわないように、仮に、糸であらく縫っておくこと」 という意味があります。
これは、できあがった着物のどこかがつったり、おかしな形になったりしないように、まず、縫いはじめの基礎をしっかりしておくということでしょう。つまり 「はじめの基礎をしっかり」 という意味で、子どものしつけと、まったく同じです。
ところが、子どもに対するしつけには、着物のしつけのなかでの、もっともたいせつなことのひとつを忘れてしまっていることが少なくありません。それは、着物のしつけ糸は、あとで、かならず、きれいにとってしまうものだということです。
親が、幼少期のわが子へ 「しつけ糸」 をつけてやることは、たいせつです。しかし、この糸も、着物の 「しつけ糸」 と同じように、やがては、きれいにとってやらなければいけないのに、それを忘れている親が少なくないのです。
わが子のからだから、しつけ糸をとってやるとき、それはいうまでもなく 「わが子も、もう安心」 というときでしょうが、この 「もう安心」 というときには、子ども自身に、ものごとを自分の心で正しく判断するものが、育っていなければなりません。
したがって、子どものしつけには、ふだんから親の命令よりも、子ども自身に考えさせることこそたいせつであり、これを怠って、親の権威と力だけでしつけてきた人が、不安なあまりに、しつけ糸をとってやることを忘れるのです。
子どものしつけは 「子どもを、1日も早く、しつけから解放してやるために、しつけるのだ」ということを、忘れてはなりません。