こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 13
● けんかを奨励するわけではないけれど……
このごろの子どもは、学校でも、外でみんなと遊んでいるときでも、けんかをすることが少なくなったといわれています。これは、一見、すばらしいことのようです。
しかし、けんかをすることが少なくなったということの裏側に、悲しいことが秘められていることを、よく知っておかなければいけません。
けんかは、しかけるにしても、しかけられたものを受けて立つにしても 「自己を主張」 しようとするからおこるものであり、けんかが少ないということは、その自己主張が少ないということだからです。
もちろん、けんかを奨励することは、けっして好ましいことではありません。しかし、なんでもかんでも人と妥協するあまり、しっかりした自分の考えをもたないあまり、そして、多数の意見に従うあまり、あたりさわりなく、自分のことだけを考えて利己的に生きようとするあまり、いっさいのけんかをしないのだったら、これも、好ましいことではありません。いつも、自己を殺しているとしたら、むしろ、悲しいことです。
子どもは、友だちと仲よくしたり、衝突したりしながら、集団の中での生きかたや社交を身につけていくのです。したがって、いちがいに 「けんかをする子は、いけない子だ」 ときめつけてしまうことには問題があります。
子どもがけんかをしてきたら、ただ、おとなの立場で頭ごなしに叱るのではなく、子どもの言い分を、しっかり聞いてやることがたいせつでしょう。