「いずみ書房」が創業後に刊行した、ポケット絵本シリーズの第1期「せかい童話図書館」(40巻)、第2期「こども科学図書館」(40巻) につづく第3弾は、1980年4月に完成した第3期「子どもワールド図書館」(38巻)だった。子ども向けの文化地理の絵本シリーズとしては類のない企画で、当時TBSのニュースキャスターをしていた、入江徳郎氏(元朝日新聞論説委員で「天声人語」の筆者としても有名)は、このシリーズに対し、次のような推薦文を寄せてくれた。
「いま世界には160以上の国がある。ジェット機やテレビの宇宙中継技術、通信技術の発達などにより、世界は著しく狭くなった。しかし、それにもかかわらず私たちの世界の国々についての知識は貧弱なものである。早い話が私たちは、お隣の韓国やアジア諸国のことを、遠いヨーロッパやアメリカほどには知らないはずである。「子どもワールド図書館」が、世界の主要な国々について、今日の姿や歩みを国々の歴史に照合し、それらのひとつひとつがそこに住む人々にとってどんなに重要であったか、人々の叡知がどのように凝縮されてきたかなどを、わかりやすく紹介してくれたことは、大変意義深い試みであると思う。こうした理解が、あの国は暑いとか寒いとか、何が有名だといったような表象的なものでないホンモノの理解であり、ますます国際化した社会に生きなければならない子どもたちには、いっそう要求されるものなのである」
評判はよかったものの、世界の国々の変化のスピードはまことに速い。増刷のつど、改訂を試みたが追いつかない。1991年に補遺版を刊行し、東欧諸国の民主化、東西ドイツの統一、ソ連の消滅、チェコとスロバキアの連邦解消、苦悩がつづくユーゴスラビア、ECの統合など30項目にわけ「世界はいま」(世界と日本の30大ニュース)を添付した。だがその内容も、1、2年もすると改訂をせまられるほど変貌してしまうのだ。そのため現在は、内容に古い点があることを承知いただいた方にのみ販売することにしている。