「童話」と「科学」は決して対立するものでなく、どちらも子どもたちの広い世界を知りたいという欲求を満足させるジャンルである。童話は [想像の世界] であり、科学は [現実の世界] である。車の両輪のようなもので、一方が欠けては成り立ち得ない人間の精神生活の2大支柱だといってよいだろう。この両者をバランスよく与えてこそ、子どもたちの健全な世界観がつちかわれる。
ところが「童話」はともかく、「科学」というと、多くの人は学者や専門家でなければよくわからないもの、という一種の恐怖感をいだきがちだ。特にお母さん方には、科学に弱いと自認している人が少なくない。おそらく学生時代に、よくわからないまま覚えさせられた法則とか定理とかいうものが頭にこびりついているせいなのだろう。
しかし本来、子どもは好奇心、探究心に満ちあふれた存在で、じっくり観察してみると、おとなが考えている以上に、子どもたちの日常生活には科学が精力的にとり入れられている。この「科学する心」を伸ばしてやれるかどうかは、まさに親の手ひとつにかかっているといっても過言ではない。
たとえば、ミミズを指でつまんで「ミミズって何を食べてるの?」という子どもの質問に対し、「まあ、きたない。早く捨てちゃいなさい」 と、ヒステリックにいうお母さんをよくみかける。
いっぽう「土を食べて土を糞にしているの。土の中にある枯れ葉や、ちっちゃな虫や、動物のたまごが栄養になっているのよ。ミミズがそうやって土をたがやしてくれるおかげで、野菜や作もつがよく育つの。ミミズってとても人間に役立つ生きものだから、だいじにしましょうね」(「かがくしっもんばこ」2-45 ページ )というお母さんと、子どもの将来に与える影響は、どんなに大きな差になってあらわれるか計りしれない。ぜひ、こういう母親をめざしてもらいたいものである。