当時の私は、2人の子どもたちから質問ぜめの毎日だった。これまでは5歳の子からの質問が大半だったのが、下の子も負けずにはじめるようになり「あれは何なの?」「どうして?」「なぜなの?」絵本を読んであげても、テレビを見ていても、道を歩いていても、よくもこんなに質問することがあるかと思うばかりの集中攻撃だ。
心理学では、子どもがこのように質問を連発する時期を、質問期と名づけている。知能の芽、探究心の芽がぐんぐん伸びはじめている時期で、3・4歳時頃の、身辺にあるものを指さして名前を聞く時期を第1質問期、4・5歳の物事や事象の原因や結果を聞く時代を第2質問期という。
第1質問期では、なかなか説明しにくいことでも、何とか説明してあげるだけで満足している例が少なくない。ところが、第2質問期といわれる4・5歳になると、思いつきやごまかしの回答では満足しなくなる。おとなの常識をこえた、奇抜な質問をしてくるのもこの時期だ。おまけに、子どもの限られた経験や思考力に応じたわかりやすい回答をしなくてはならないのだから、親たるものなかなか大変なことである。
あまりのしつこさに 「うるさい子ね、すこしは静かにしてよ」 「いま忙しいんだからあとにして! 」 「大きくなったらわかるわよ」 「お兄ちゃんに聞きなさい」 「何度いえばわかるの」 「そんなこと知るもんですか」 といったような返事をしがちである。
これが特別の場合ならいざ知らず、何時いつも誠意ある回答をしないと、子どもたちは質問にやってこなくなる。このことが、知らずしらずのうちに、いつか花開く才能の芽をつみとっているかもしれないのだ。