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言葉の発達とテレビの問題点

人間の赤ちゃんは、1歳代では同じ年令のチンパンジーより知能が低い。動作の面はもちろんのこと、記憶したり考えたりする面でも劣る。ところが2歳代になると、たちまちチンパンジーを追い抜く。言葉を使えるようになるかららしい。それほど、言葉の発達と思考力には密接な関係があるということなのだろう。ところが最近、子どもたちはお母さんから豊かな言葉を聞くチャンスか少なくなっている。子守りはいっさいテレビにおまかせという家庭が多くなっているのだ。

もちろん、テレビの影響がみんな悪いとはいわない。子どもにとって、おもしろいものが善であり、つまらないものが悪だ。身のまわりに何かおもしろいものがないか、探し続ける好奇心のカタマリみたいな子どもたちにとって、もっとも手っ取り早い興味がテレビなのだから。

テレビは、思うような遊び場所を奪われた子どもたちには、こたえられない存在である。なにしろ、素早い画面展開とヒーローやヒロインが、人間ワザとは思えない超能力を発揮し、次々にあらわれる悪ものどもをなぎ倒す。しかも、スリルとサスペンスに満ちあふれているのだから、子どもたちを魅きつけないわけはない。テレビ文化が成立したおかげで、幼児生活はどれほど楽しく、恵まれたものになったかはかりしれないものがある。

しかし、言葉の大切さ、たくさんの言葉を身につけさせるという視点からみると、テレビという機械には欠点も多いということも知っておきたい。つまりテレビは、相手におかまいなく、一方的に情報を送りつける。だから、視る方は受身で、物事を深く考えなくてもよいし、想像力をはたらかせなくてもよい。本来言葉というのは、人と人との間で、考えを伝えるコミュニケーションの手段である。したがって、子どもの言葉の発達を促進するには、相手になる人を必要とする。

言葉というのは、たまに使用するのでは発達しない。だから、できるだけたくさん練習できる機会をつくることが重要だ。そのためには聞いてあげる相手、親や兄弟、友だちが必要なのである。そして、言葉は何かについて話をするわけだから、話の対象である材料が豊かであり、話をする経験が豊かでなくてはならない。そこに「絵本」の大切な役割があるといってよいだろう。

投稿日:2005年09月02日(金) 10:13

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)