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親子の対話を深めるために

科学図書館表紙 こども科学図書館」の基本方針を、具体例をあげて説明してみよう。

先にふれたように、子どもたちは自分の身近なものには何でも新鮮な関心をもち、わかろうとする知的好奇心を持っている。そして、未熟な体験ながらも、さまざまなイメージをつくりあげている。たとえば「いぬ」という言葉を聞いたとき、近所にいるよくほえる犬、公園でじゃれついてきた可愛い犬、テレビで見たかしこい犬というふうに、体験から知り得た情報をもとに、犬のイメージを頭にえがくことになる。ところが情報量が少ないと、それ以上犬に対するイメージは広がらないし、深まらない。好奇心はあっても、いっそうの進展が期待できないのだ。

科学図書館見開き こども科学図書館」の13巻目「いぬ」を開いてみると、犬の赤ちゃんの誕生からはじまる。よちよち歩き、すぐにいたずらをはじめるようになり、一人前になっていく様子を段階的に描写する。人間と犬との歴史的なつながり、犬のさまざまな身体的特長、うれしい時やかなしい時の感情のあらわし方、飼う時の注意、目のみえない人を助けたり、どろぼうをつかまえたりする犬、羊などの動物の番をしたり、ソリをひいたりする犬など、人間生活との深いかかわりがあることを、相当なページをさいて解説している。

日本生れの犬、外国生れのいろいろな犬、さまざまな愛玩犬。さらに、きつねやたぬきやおおかみなどが犬の仲間だというように、実に多様な側面から犬に関する情報を提供して、子どもたちの感受性と知的好奇心を刺激して関心を深め、発展性をもたせる工夫をこらしているわけである。

投稿日:2005年09月07日(水) 10:33

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)