これまで、いずみ書房の創業期の、まさに生きるか死ぬかの大苦戦物語を記述してきた。そして、独自のフランチャイズシステムによる販売組織を少しずつ作り上げることができ、以来およそ10年もの長い間、試行錯誤しながらもこのシステムの恩恵を受けながら、多くの出版物を刊行することができた。
「せかい童話図書館」(全40巻)に続く、「ポケット絵本シリーズ」の第2弾は、1978年5月に完成した「こども科学図書館」(全40巻)だった。1977年の中頃までの私の収入は当てにならぬどころか持ち出しばかりの体たらくで、妻の収入に依存していたことは、以前記述した通りであるが、1977年7月に妻は社会思想社を退社して、JR巣鴨駅、都営三田線千石駅に近い「いずみ書房」の事務所で、いっしょに仕事をはじめるようになった。ようやく、先の見通しに明るさがみえはじめた頃ではあったが、まだ人を雇い入れるほどの余裕がなかったことも事実である。私たちは、がむしゃらに働き続けた。
これから何回かに分けて、この「こども科学図書館」の制作意図がどんなところにあったかを記述することにしよう。