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さまざまな体験から言葉の概念を形成

科学表紙 昔から、ヨチヨチ歩きをはじめた子どもに危険なものを教える時、熱いアイロンやヤカンをさわらせてきた。そういう、アツイという体験が子どもにしっかり覚えこまれるため、アツイといえばストーブにも近づかなくなるし、アイロンをかけているじゃまもしなくなる。そして、おふろのお湯か熱い、ミソ汁が熱い、カゼをひいて熱が出た、日差しが暑いというように、日常的な体験をつみ重ねてアツイという言葉と、自分の感覚が結びついてアツイという概念を形成する。さらに大きくなると、物事に熱中するとか、勉強に熱が入らない、熱狂する人々、熱弁をふるう、というようなことへの理解へと発展させていくのである。こうして人は、どんな言葉でも、何年もかけてひとつのイメージから概念を形成し自分のものにしてきた。言葉の認識は、体験のつみ重ねが本質だといってよいだろう。

こども科学図書館」 のどの本も、さまざまなイメージから一歩一歩つみあげて、概念を構築する作業の手助けをする対象にほかならない。そのためには、単に絵本を子どもに与えるだけでは不充分。絵本を読んであげたり、絵本を仲立ちに親子の対語を深めたり、たとえば子どもが「いぬ」に興味がおぼえたら、飼ってあげたり、それが無理なら飼っている人に頼んで深く接触する機会をつくってあげることが大切ではないだろうか。

こうした地道な積み重ねの体験の中で、新しい問題を解明していく能力が開発され、創造性のある視野の広い人間へと生長する礎となるのだと思う。

投稿日:2005年09月08日(木) 09:44

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)