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芋俵

「おもしろ古典落語」の43回目は、『芋俵(いもだわら)』というお笑いの一席をお楽しみください。

落語に出てくる泥棒は、たいていまぬけなやつに決まってますが、なかにはちょっとばかり知恵のあるのもいます。「なぁ、兄弟、このごろはうまい仕事がさっぱりなくなっちまったな。そろそろ商売替えでもしなきゃならねぇ、なにかいい仕事ってねぇかな」「心配するな、三丁目に大きな木綿問屋があるだろ、このあいだから、あの店をねらってるんだ」「ああ、知ってるけど、奉公人は大勢いるし、しまりは厳重だし、むずかしかねぇか」「ちょいと、頭を使うんだ。そこに芋俵があるだろ、中に人間を入れて、上からさんだらぼっち(俵の上下に当てる藁のふた)をかぶせてしまやぁ、だれだって芋俵だと思うだろ。そこで、おれが先棒、おまえが後棒になって、てんびん棒を通してかついでいくんだ」

「『まことにすみませんが、わたしどもは町内の者でございますが、こいつが芋屋で買い物をして、財布を忘れてきちまいました。これから、ちょいと取ってまいりますんで、おじゃまでしょうが、お店の前に置かしてください。中は芋です』って頼みこみゃ、いやだっていわねぇだろ。夜になっても取りにいかねぇ。預かりものを失くしちゃめんどうだっていうんで、俵を店んなかにかつぎこんで、土間にでもころがしといて寝ちまうだろ。夜なかになって、俵ん中に入ってたやつが出てきて、しまりを外して、外で待ってるおれたちを店に入れて、たっぷり仕事をするって筋書きだ」「そいつはうめぇ考えだが、いったい俵ん中に誰が入るんだ、」「おっと、ちょうどいいのが向こうからきた。あいつは、親分のところにやっかいになってる松公だ。少しまぬけなやつだけど、俵ん中へ入れてやろうじゃないか、おーい松、ちょっとこい」

「いゃー、そろったな泥棒!」「ばか野郎、大きな声で泥棒っやつがあるか、それよりてめぇ、銭はあるか?」「からっきしだ。仲間に入れてくれ」「そんなら、おれたちが金もうけをさせてやろうじゃないか。ちょっと耳をかせ」……てなぐあいで、なんとか計画通りにことが進みました。ところが、店の小僧の定吉が、俵を店に入れる時に逆さに立ててしまいました。俵の中の松公、身動きが取れずに四苦八苦。でも声は立てられません。

そのうち定吉と女中のお清が、俵の芋をちょいと失敬して、蒸かして食べよう、どうせ二つや三つならわからないと示し合わせます。「こっちだよ、真っ暗だから、気をつけないと危ないよ。ずいぶん厳重に縄がかかってるな」「縄をとくんじゃなくて、俵の横っ腹に手をつっこんで、引きずり出せばいいのよ」「ああそうか、お清どんは泥棒なれしてるね」「人ぎきの悪いことをいうんじゃないよ、泥棒なれじゃなくて、頭がいいんだよ」

定吉が俵に手を突っこむと、逆さだから、上の方が股ぐらあたり。そこをまさぐられたので、松公、くすぐったくてたまりません。でも笑っては大変と、下腹に力を入れたとたん、思わずプゥーっと一発。これを聞いたお清……

「まぁ、気の早いお芋だこと」


「10月13日にあった主なできごと」

1282年 日蓮死去…鎌倉時代中期の僧侶で、法華経に基づく教えこそが唯一の仏教の真髄と説く日蓮宗(法華宗)を開いた 日蓮 が亡くなりました。

1884年 世界標準時…アメリカのワシントンで「本初子午線ならびに計時法万国公会」が開かれ、イギリスのグリニッジを通る子午線を、経度0度とする世界標準時と決めました。日本では1886年から使われるようになり、日本の標準時は、世界標準時より9時間進んでいます。

1903年 小林多喜二誕生…『蟹工船』などを著し、日本プロレタリア文学の代表作家といわれる 小林多喜二 が生まれました。

投稿日:2011年10月13日(木) 07:43

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)