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たぬさい

「おもしろ古典落語」の31回目は、『狸賽(たぬさい)』というお笑いの一席をお楽しみください。

「こんばんは、こんばんは」「もう寝ちゃったよ、あしたにしてくれねぇか」「ちょっと開けてください」「だれなんだい?」「た、たぬきです」「たぬき? たぬきになんぞに用はねぇ」「そちらになくても、こっちにあるんで……」「ははぁ、だれか夜遊びして、閉めだし食って、泊めてくれってんだな。待ちなよ、今開けるからな……、さぁお入りよ。ありゃ、だれもいねぇじゃないか。おい、どこへ行ったんだ? そこらへ隠れて『わっ』なんておどかそうってつもりか? よしなよ、子どもじゃねぇんだから」「えっへっへ、もうちゃんと入ってます。こんばんは」「な、なんだ、そこのすみっこにいる黒いやつは」「はいっ、たねきでござんす」「どっから入った?」「親方のまたぐらをくぐって入りました。たいそうフンドシが汚れてますね」「大きなお世話だ…たぬきが、何だって、こんな夜遅くやってくるんだ」

昼間、いたずら坊主たちにいじめられているところを、男に助けられたので、その恩返しにきたといいます。「穴にもどって、親に話したら、おやじが感心して、腹をポンポコたたいて喜びまして……、当分おそばにいて、ご用を足してこいといいますんで」

それにしても、何にでも化けられてとても便利です。爺さんに化けて家のまわりの掃除をしたり、小僧に化けて家事をやってくれたり、お札に化けて、米をかすめ取ってきたり。そこで男が思いついたのが、今夜開かれるさいころバクチのこと。たぬきをさいころに化けさせて持っていけば、自分の好きな目が出て大儲けというわけです。さっそく訓練してみると、あんまり転がすと目が回るなどと頼りなかったものの、何とか仕こんで、勇んで賭場へでかけます。

強引に親を取るや、男が張る目張る目がみんな大当たり。たちまち男の前には札束の山になりました。ところが、やたら「今度は一だ」「三だよッ、三だ三だ三だ」などと、いちいちしつこく指示を出すので、仲間たちは疑いだします。もうけるだけ儲けて退散しようとすると、最後の勝負と、先に張られてしまい、「おまえねぇ、目を読んじゃいけないよ。おまえが目を読むと、その通りに出てくるんだから、気になるじゃねぇか…黙って勝負しろい」と釘をさされてしまいます。

開いた目は五です。もう五とはいえません。「うーん、目をよまなきゃいいんだろ。今度は何だ、そう、梅の花びらだ。えー、まーるくなって、真ん中にひとつポツン。天神さまのもようだ、たのむ天神さま……」

つぼを開けると、たぬきが冠をかぶって、天神さまのかっこうで座ってました。


「7月21日にあった主なできごと」

1588年 無敵艦隊敗れる…イギリス本土をねらうスペインのフェリペ2世は、自慢の無敵艦隊(アルマダ)を率い、イギリス艦隊との海戦を開始しました。しかし10日間ほどの交戦の末、機動力のある小型船を駆使したイギリス艦隊に敗北してしまいました。

1899年 ヘミングウェイ誕生…『日はまた昇る』『武器よさらば』『老人と海』などを著したアメリカの小説家ヘミングウェイが生まれました。

1969年 人類初の月面着陸…アメリカの宇宙船アポロ11号が人類初の月面着陸したようすが、日本の昼食時にテレビ報道された日です。世紀の瞬間を見ようと、街頭テレビなどに人々がむらがって、大都市の交通量が半減しました。

投稿日:2011年07月21日(木) 07:01

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)