児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ Top >  今日はこんな日 >  「古学先生」 伊藤仁斎

「古学先生」 伊藤仁斎

今日7月20日は、江戸時代前期に「古義学」を提唱した儒学者・思想家の伊藤仁斎(いとう じんさい)が、1627年に生れた日です。

京都・堀川の材木商人の家に生まれた仁斎は、11歳のとき、『大学』を読んで感動したといわれるほど聡明でした。『大学』は、中国の古典の一つで、『中庸』『論語』『孟子』と並んで四書といわれるものの一つです。15歳のころには儒学者を志して勉学にはげみ、儒学の一派で宋の時代に完成した朱子学を修めました。

28歳の頃から、家の仕事は弟にまかせて学問に集中するうち、朱子学の考え方に疑問を持つようになりました。やがて、「朱子学は学問体系としては優れているが、その成立過程に禅学や老荘思想といった非儒教的な思想が入っている。儒学はその出発点である孔子や孟子にさかのぼるべきだ」と考え、自宅に「古義堂」と名づけた塾を開くとともに、「同志会」という共同研究会を組織しました。そして、朱子学が「理」と「気」という2つの原理で世界を説明していたのに対し、宇宙は一つ、それを「一元気」と呼びました。さらに、学問とは「仁」、つまり愛に基づいた道徳を実行することであり、人はそれぞれが持っている素質を伸ばすべきと主張するなど、日本の儒学の歴史の中で、独自の学問体系を作り上げました。

仁斎の高い学問を知って、肥後国(熊本県)細川家や、紀伊国(和歌山県)徳川家などからの招きもありましたが、仁斎はそれらををいっさい断って、3000人ともいわれる弟子たちと共に学問を深めていきました。主著に、『論語古義』『孟子古義』『語孟字義』『中庸発揮』『古学先生文集』などがあげられていますが、生前は40年以上も続いた講義とその準備にあけくれていて、著書は、1705年に亡くなったあとに、弟子たちの手で刊行されたものです。

仁斎は、すぐれた人格者として讃えられ、まったく仕官もせず、貧乏のうちに生涯を終えましたが、その新しい学問の流れは、「古義学派」とか「堀川学派」と呼ばれ、近世儒学界の一大学派を形成したのでした。


「7月20日にあった主なできごと」

1883年 岩倉具視死去…公家出身で幕末から明治前期に活躍した政治家 岩倉具視 が亡くなりました。

1937年 マルコーニ死去…無線電信の発達に大きな功績をのこした、イタリアの電気技術者 マルコーニ が亡くなりました。

投稿日:2011年07月20日(水) 08:05

 <  前の記事 「人文学の父」 ペトラルカ  |  トップページ  |  次の記事 たぬさい  > 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://mt.izumishobo.co.jp/mt-tb.cgi/2463

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

         

2014年08月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

月別アーカイブ

 

Mobile

児童英語・図書出版社 社長のこだわりプログmobile ver. http://mt.izumishobo.co.jp/plugins/Mobile/mtm.cgi?b=6

プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)