こうすれば子どもはしっかり育つ 「良い子の育てかた」 75
母親が子どものことを 「勉強はあまりできませんが、素直なだけがとりえです」 「親に逆らうようなことのない素直な子です」 などといいます。母親同士の会話の中にも 「素直が一番ですよ」 という言葉を耳にすることが少なくありません。
ところが、そういう会話に耳を傾けていて 「少しおかしいのでは」 と思うことがしばしばあります。それは、母親のいう 「素直さ」 とは、「親に逆らわない」 「人に反抗しない」 「親のいうことは何でもハイハイ聞く」 ということに偏りすぎていると思うからです。
「飾り気がなくありのままであるさま」 「心の正しいさま」──これが 「素直」 という言葉の本来の意味です。したがって、子どもの側からいえば 「自分の思ったこと、考えたことを率直にいう」 「自分の正しいと思うことを率直にいう」 「自分の信じることを自分に正直に行なおうとする」 ということです。つまり、いいたいこともいわず、あるいはいえずに人に従うのは、決して 「素直」 といえるものではありません。一方では親の顔を見、一方では自分を殺して、見せかけの 「素直さ」 をつくろっているにすぎないのですから。
どんなことでも、自分の思ったことをはっきりいう、その上で人のいうことにも素直に耳を傾ける、自分のしたいことをはっきり告げ、人の意見は温かく受け入れながらまっすぐに進んでいく──こういう 「ほんとうの素直さ」 をもった子どもに育てたいものです。