こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 60
ある駅の近くでのことです。もうすぐ電車が入るのか、歩いていた人たちが、いっせいに走りはじめ、5歳くらいの女の子の手をひいていた若い母親も、かけだしました。すると、ひきずられるようにしていた女の子の、片方のくつがぬげてしまいました。
これを、うしろから見ていて、きっと、あの母親の口からとびだすにちがいないと思ったのは 「なにしてるの」 という言葉でした。
ところが、この予想は全くはずれました。
「ごめんね。ママが、お家をでるのが、おそかったのね。ママが悪かったのに、走らせたりして、ごめんね。ゆっくり行って、この次の電車に乗りましょう。ごめん、ごめん」 母親は、ひろってきたくつをはかせながら、4度も 「ごめん」 と言ったのです。
これを見ていて、最近の母親も、なかなかすてたものじゃないぞ、と嬉しく思ったものでした。
親は自分の気がせいているとき、あるいは気がいらだっているとき、子どもに 「なにしてるの」 「早くなさい」 「ぐずぐずしないで」 などという言葉を投げかけてしまうことが少なくありません。子どもがころんだときも 「なにしてんの」 と言いがちです。
でも、たいていの場合は、親の身勝手な叱り方です。親に 「急ぎなさい」 とせかされて仕方なく急ぐうちにころんで痛いめにあい、そのうえ 「なにしてんの」 と叱られては、子どもはたまりません。
先の母親のように、子どもの心、子どもの立場、もっといえば子どもの人格を、いつもあたたかく考えていたいものです。