こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 56
バスの中で耳にした、二人のお母さんの会話です。
「わたし、変わり者あつかいされたのよ」
「何で?」
「うちの子は、進学のときに不利でも、塾に行かせたくない と言ったの。そしたら、あなたも変わってるわねだって」
「そんなことを言ったら、変わり者と言われても仕方がないわよ」
「どうして? みんなと同じことをしない、同じように考えない、ただそれだけで変わり者ときめっけるのは、おかしいんじゃない?」
「理屈はそうだけど…」
「理屈じゃないわよ。わたしは、むしろ [まわりがそうだから、うちの子も] というほうがおかしいと思うの。その [まわりと同じでないと] という考えが、子どもたちの中にも定着して、それが、みんなと違う子をいじめるということにもつながっているのではないかしら…」
このあとの会話は、こちらがバスを降りたため聞くことができませんでしたが、変わり者あつかいされたことに怒っていた母親の言葉は、しつけの一番大切なこととして心に残りました。
多くの母親は [まわりに負けないように] [まわりに笑われないように] [まわりより少しでもよくなるように] などと、自分でも気づかないうちに、まわりとの比較において、わが子を導いたり評価しているようです。まわりを見まわし、親が勝手に平均値のようなことを決めて、わが子がそれより劣っていると判断すると [おまえはだめな子、もっとしっかりしろ] と尻をたたく。これは、とてもおかしな話ではないでしょうか。
まわりを物差しにしないで、子ども自身をよく見つめて導いたり評価する、これが子どもに [自分を確立させる] ことにつながるのだとおもうのです。