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「千の風になって」 に思うこと

先日の多磨霊園めぐり(4月10日号)の途中、あるキリスト教系の墓地の前で、若い神父さんの説教を聞く10数人の遺族と思われるグループに出会いました。そこに、聴き覚えのある音楽が流れています。何の歌だったかと思い浮かべているうち、「千の風になって」のメロディであることに気づきました。この歌は、昨年末のNHK紅白歌合戦で、秋川雅史というテノール歌手がうたって大好評だったこと、翌1月15日に発売したCDが翌週オリコンのシングルチャート第1位となり、その後も売れ続け80万枚を超えたこと、クラシック系の音楽としては異例の売れ行きになったということは、新聞などの報道で知っていました。この詞の内容は、次のようなものです。

私のお墓の前で泣かないでください そこに私はいません 眠ってなんかいません
秋には光になって畑にふりそそぐ 冬はダイヤのようにきらめく雪になる
朝は鳥になってあなたを目覚めさせる 夜は星になってあなたを見守る
私のお墓の前で泣かないでください そこに私はいません 死んでなんかいません
千の風に 千の風になって あの大きな空を吹き渡っています

おそらく、亡くなった方の遺志でこの歌が流されていたのだと思われますが、「お墓にこなくてもいい、お墓にいないのだから」という歌がお墓の前で流れている矛盾はともかく、この詞の内容が、キリスト教や仏教などの考え方とは全く異質のものであるだけに、私には特に印象深く思えました。

この歌は欧米では以前からよく知られていましたが、さらに有名になったのは、2001年9月11日のニューヨーク同時多発テロ事件で亡くなった方々の1年後の追悼集会で、この歌の原詩が英語で朗読され、世界中の人々を感動のうずに巻きこんだことがキッカケでした。芥川賞を受賞した作家新井満氏もこの詩の存在を知り、この歌を訳詞し、曲もそえてみずから歌唱したのがCDになって話題になりました。朝日新聞「天声人語」などにも紹介され、その後写真集や絵本、DVDも発売されて、日本中に広まっていきました。(以下次回)

投稿日:2007年04月27日(金) 09:12

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)