昨年12月28日号に続き、いずみ書房が英国レディバード社から翻訳権を得て、1985年に6番目のシリーズとして刊行した「レディバード図書館」のおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう。
(22) にげだした ホットケーキ
この話も 「ひよこのリキン」 と同じような典型的な繰り返し話です。逃げだしたホットケーキをみんなで追いかけるという、いたって単純なストーリーですが、そのユーモラスでしかもリズミカルな展開は、お話になれていない幼児にぴったりです。しかも、子どもたちの大好きなホットケーキが主人公ですから、それだけでも興味深いイギリスのお話です。1700年代後半に生まれた比較的新しい昔ばなしだといわれています。
お母さんのつくるホットケーキを待っている7人の子どもたちの姿は、まさにお話を聞く子ども自身の姿であり、焼けるのを今か今かと待つ気持ち、やっと食べられるかと思ったところが逃げられてしまう悔しさ、ホットケーキを必死に追いかけるすがた、最後にブタにたべられてガッカリした気持ち。子どもを作品の中に参加させて、ハラハラドキドキ、空想の世界に遊ばせますが、最後には現実に引きもどし、子どもに現実をいじくりまわすことを許さない厳しさがあります。その点は、「ひよこのりキン」 にも共通するテーマだといえましょう。