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清張の「熱い絹」はお勧め

年末年始は、読書を楽しんだ。その中心は、松本清張の長編推理小説「熱い絹」(講談社文庫・上下巻)。清張の作品は、まだ20代のころ、「張込み」に始まり、「点と線」「砂の器」「波の塔」「霧の旗」「黒い樹海」など、カッパブックスになっていたシリーズを片端から読んだ記憶がある。以来清張は卒業した気持ちでいたが、昨年1月末から2月はじめにかけて訪問したマレーシアのキャメロン・ハイランドが舞台となった小説ということで、いずれ時間ができたら読もうと買い置いたものに取り組んだわけである。 文庫本の裏表紙には、それぞれ次のキャッチが記されている。

熱い絹


(上巻)自然の密室マレーシアのカメロン・ハイランドに忽然と消えたタイ・シルク王。はたして、事故か拉致されたのか、あるいは失踪か。この事件と軽井沢で起きた殺人事件との間にひとつの接点が見出された時、謎が謎を呼び、劇的に進行していく。壮大なスケールで展開する巨匠渾身の推理大作。
(下巻)マレーシアの高原カメロン・ハイランドの密林に消えた大富豪。その謎を日本・マレーシアの両警察が追ううちに次々と起こる連続殺人。緊張をはらみつつ、事件は意外な結末へと一気に向かう。1967年に起きたタイ・シルク王「失踪」事件を背景に、雄大な構想でまとめあげられた本格長編推理完結。

 率直な読後感は、「久しぶりに面白い小説に出会った」というものだ。ぐいぐい惹きつける面白さは、昔読んだ作品に共通するものがあるが、そのスケールと内容は清張最高の傑作と思えるほどで、ズシリと重いものがある。ほとんど知らなかった太平洋戦争時の日本軍マレー半島南下作戦にさかのぼる記述、捕虜となった男が脱走し、ジャングル奥深く狩猟放浪する山岳民族にかくまわれて生き延び、「賢者」とよばれ、キャメロン高原の名産「キャメロン紅茶」の茶畑を静岡式茶畑とする部分などは感動的。紅茶の茶畑が、なんと日本の茶畑と似てるのだろうと思っていたのに得心がいった。ツアーのコースとして訪れた寺院「三寶萬仏寺」など、作品の舞台となった地を改めて訪問したい思いがふつふつと湧いてきた。 本年も、よろしくお願いいたします。

投稿日:2006年01月05日(木) 13:01

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)