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ノミとり物語

わが家の愛犬モカにノミがとりついたのは、1ヶ月ほど前のこと。かゆがっているので、久方ぶりにシャンプーをしてあげた。モカは4年10ヶ月のパピヨンの女の子(最近はメスといわなくなった)、人間でいえば妙齢のご婦人ということになる。白い毛がふさふさしているため、ノミにとっては住むのに実に環境のよい場所のようだ。

しばらくは、シャンプーの甲斐あって、かゆみはおさまっている感じだったが、半月ほど前からかゆがり方が常軌を逸している。しっぽから、腰のあたりに集中しているようで、たえずそのあたりを掻いている。見てあげようとすると、この子は噛みつこうとする。どうも、亡き妻・国子が幼児教育を怠ったことが原因している。彼女は人間の子どもの幼児教育は、こちらが感心するほど立派な理論と実践を展開してきたが、イヌに関しては可愛がるだけで甘やかし放題。寝るときくらいはゲージの中と、私がモカを入れようとすると、そんなことは可哀そうと自分のベッドの中にもぐりこませていた。そんなこともあって、モカは自分の気に入らないことはなんでも拒否するのである。

いろいろ考えた末、ノミだって生きものなのだから呼吸をしている。モカを風呂に入れてあげれば、呼吸ができなくなったノミは、苦しがって浮き上がってくるに違いない。これはいいことを思いついたとばかり、お湯の温度を37度に設定して、モカをはじめて風呂桶の中に入れた。はじめは騒ぎまくっていたが、やがて気持ちよさそうにしている。十数匹が浮きあがってきたので、10分ほどで出してあげた。ドライヤーで乾かしてあげているうち、何と、まだ何匹かのノミが動いているのである。ノミの生命力というのはすごいものがある。絶滅させることはできなかったが、しばらくはいいだろうかと高をくくっていた。

ところが、先週21日の夜のかゆがり方は半端なものじゃない。全身を掻き回し、時折、キャンキャン声に出してかゆがっている。モカのそんな声に何度も眼をさまさせられた。「よし、今度こそ絶滅へ挑戦だ!」とばかり、目覚ましを30分ほど前倒しして翌朝、再挑戦。今度は、30分間は風呂桶の中に入れておくと決意した。前回は騒いだが、今回は、私が何をしようとしているのかを察知したようで、おとなしくしている。その点では、頭のいいイヌだ。15分もすると、息のできなくなったノミが少しずつ浮かびあがってくる。20分もたつと、どっと浮かんできた。成功のようだった。当日朝のモカは、私を見送りに出てもこず熟睡していた。

しばらくは、かゆみから開放されるだろうと思いきや、まだ残党が残っているのだろうか。昨日あたりから、また、かゆがりだした。週末に、とどめをさしてやろうかと考えている。

投稿日:2005年07月26日(火) 09:38

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)