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やさしい昔ばなし 3

前回に続き、「レディバード図書館」シリーズのおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう

(23) 3びきの やぎ

小、中・大の3びきの野生ヤギと、魔物的な巨人トロルとの戦いをスピーディに語る北ヨーロッパに伝わる昔ばなしです。

3びきのやぎ4まず、小さいヤギが橋を渡ろうとすると、トロルが恐ろしい声で呼びかけます。このとき子どもたちは、小さいヤギといっしょになって、ハラハラしながら、トロルをみつめることでしょう。しかし、この小さなヤギは利口でした。トロルに、自分より大きくてふとっているヤギが後からくることを話して、うまく危機を脱します。緊張した子どももほっと胸をなでおろすことでしょう。

3びきのやぎ1次に登場するのが中くらいのヤギです。中くらいのヤギも小さいヤギと全く同じ手で難をのがれます。子どもたちの期待どおりの展開です。そして、最後に大きいヤギの登場です。もう小さいヤギや中くらいのヤギと、同じ手は使えません。子どもたちは、大きいヤギが一体どうやってトロルの手からのがれるのだろうか、興味津々の場面です。

3びきのやぎ23びきのヤギが橋をわたる足音は、小さいヤギがコツコツ、中くらいのヤギがガタガタだったのに、大きなヤギの足音は、ドンドンドンドンといかにも強そうです。大きなヤギが堂々とトロルに戦いをいどみ、みごと川に突き落としてやっつけてしまう力強い幕切れに、子どもたちは大いに満足することでしょう。

3びきのやぎ3この小、中、大の3びきのヤギは、人間の成長過程を表わしているとみることができます。小さいヤギは幼い子ども、中くらいのヤギは若者、大きなヤギは一族の長にふさわしい勇気と力にあふれたリーダーです。大きなヤギが、堂々とトロルに戦いを挑み勝利をおさめるのを、小さいヤギも、中くらいのヤギもしっかり見届けます。こうして、知恵をもって難をのがれた小、中のヤギは、大きなヤギの行為から、勇気を学んでいくのです。

*このお話は、福音館書店から刊行されているロングセラー「3びきのやぎのガラガラドン」の元になっている昔話。

投稿日:2006年01月10日(火) 10:32

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)