前回に続き、「レディバード図書館」シリーズのおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう
(23) 3びきの やぎ
小、中・大の3びきの野生ヤギと、魔物的な巨人トロルとの戦いをスピーディに語る北ヨーロッパに伝わる昔ばなしです。
まず、小さいヤギが橋を渡ろうとすると、トロルが恐ろしい声で呼びかけます。このとき子どもたちは、小さいヤギといっしょになって、ハラハラしながら、トロルをみつめることでしょう。しかし、この小さなヤギは利口でした。トロルに、自分より大きくてふとっているヤギが後からくることを話して、うまく危機を脱します。緊張した子どももほっと胸をなでおろすことでしょう。
次に登場するのが中くらいのヤギです。中くらいのヤギも小さいヤギと全く同じ手で難をのがれます。子どもたちの期待どおりの展開です。そして、最後に大きいヤギの登場です。もう小さいヤギや中くらいのヤギと、同じ手は使えません。子どもたちは、大きいヤギが一体どうやってトロルの手からのがれるのだろうか、興味津々の場面です。
3びきのヤギが橋をわたる足音は、小さいヤギがコツコツ、中くらいのヤギがガタガタだったのに、大きなヤギの足音は、ドンドンドンドンといかにも強そうです。大きなヤギが堂々とトロルに戦いをいどみ、みごと川に突き落としてやっつけてしまう力強い幕切れに、子どもたちは大いに満足することでしょう。
この小、中、大の3びきのヤギは、人間の成長過程を表わしているとみることができます。小さいヤギは幼い子ども、中くらいのヤギは若者、大きなヤギは一族の長にふさわしい勇気と力にあふれたリーダーです。大きなヤギが、堂々とトロルに戦いを挑み勝利をおさめるのを、小さいヤギも、中くらいのヤギもしっかり見届けます。こうして、知恵をもって難をのがれた小、中のヤギは、大きなヤギの行為から、勇気を学んでいくのです。
*このお話は、福音館書店から刊行されているロングセラー「3びきのやぎのガラガラドン」の元になっている昔話。