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やさしい昔ばなし 7

前回に続き、「レディバード図書館」シリーズのおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう。

(27) おばあさんと こぶた

この話も、幼児の大好きな繰り返し話です。しかし、「ひよこのリキン」 や 「にげだしたホットケーキ」 とは型の違うユーモラスなイギリスに伝わるお話です。

おばあさんとこぶた1おばあさんが、ひろった銀貨でこぶたを買い、市場から帰る途中、こぶたがさくの前に坐りこんで動かなくなってしまいます。帰れなくて困ってしまったおばあさんは、通りかかった犬に、こぶたにかみつくようにいいますがいうことをききません。しかたなく、棒に犬をたたくようにたのみますが、これもだめ。さらに、火、水、牛、肉屋、なわ、ねずみと、次々にたのみますが、みんなことわられてしまいます。このあたりまでは、物語に慣れていない子どもにはたいくつに思える場面かもしれません。

おばあさんとこぶた2このたいくつさも、後半のスピーディな展開で一挙に吹きとんでしまいます。次におばあさんは、ねこにたのんだところ、牛からミルクをもらってきてくれればという条件をだされます。牛のところへミルクをもらいに行くと、こんどは牛に、ほしくさをもってきてくれればという条件を出されます。おばあさんがいわれた通りにしたところ、牛はミルクをくれ、ねこはねずみを追いかけ、ねずみはなわをかじり、なわは肉屋をしばろうとし、肉屋は牛を追いかけ、牛は水を飲みはじめ、水は火を消そうとし、火は棒を燃やしはじめ、棒は犬をたたき、犬はこぶたにかみつこうとし、こぶたはやっとさくをこえるという順に、まさに次つぎに倒されていくドミノを見るようなめまぐるしく展開するストーリーは、子どもたちを夢中にさせること必至です。

おばあさんとこぶた3以上、「レディバード図書館」には、7つの昔ばなしをとりあげました。幼児は、友だちと楽しく遊ぶ一方、成長するにつれ、人間が社会生活を営むときに直面するテーマに必ず行き当たります。苦難、協調、強者と弱者、勝利と敗北、優れている者と劣っている者、善悪、勇気、忍耐、恩返し、友情、愛情……といったような問題です。昔ばなしには、こうしたテーマが巧みに織り込まれ、わかりやすくおもしろく展開します。ここに、昔ばなしが子どもたちの心をとらえ、今日にいたるまで「民族の遺産」として生命を失わず生きながらえてきた秘密があるのでしょう。これをきっかけにして、子どもたちに、ふんだんに昔ばなしを聞かせてください。

今回で、「レディバード図書館」の項を終了します。

投稿日:2006年01月16日(月) 09:27

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)