前回に続き、「レディバード図書館」シリーズのおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう
(26) まほうの かゆなべ
この話もグリム童話の1つです。家に、食べるものが全くなくなってしまったある日、おなかをすかせた女の子が、魔法使いのおばあさんから不思議なかゆなべをもらいます。このかゆなべは、命令されると、欲しいだけおかゆを作りつづけます。しかし、少女のお母さんが、おかゆを作るのをやめさせる命令の言葉を忘れてしまったために、町じゅうがおかゆであふれてしまうというユニークなお話です。
グリム童話は全部あわせて200編以上もありますが、このお話はその中でも最も短い部類に入ります。そんな短編をこのような作品に仕上げたのは、まさに、再話したべラ・サウスゲイトと画家のロバート・ラムレイの功績です。特に、ストーリーとは関係なくたくさんの場面に、ねずみをはじめうさぎ、小鳥などの小動物を登場させて、子どもたちを楽しませる気くばりは、単調になりがちなこのお話を、実に味わい深いものにしてくれています。
暮らしが豊かになって、ひもじさを体験することがほとんどない現在、いくらでもおかゆを作りつづけるかゆなべが、「なんとすばらしいものだろう」 という実感は、日本の子どもたちにはないかもしれません。しかし、今や世界の人口のおよそ3分の1が飢餓状態にあるといいます。そういう人たちを思いやる気持、それに比べて自分たちの豊かさに感謝する気持を、このような作品を通して話し合っていきたいものです。