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やさしい昔ばなし 6

前回に続き、「レディバード図書館」シリーズのおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう

(26) まほうの かゆなべ
この話もグリム童話の1つです。家に、食べるものが全くなくなってしまったある日、おなかをすかせた女の子が、魔法使いのおばあさんから不思議なかゆなべをもらいます。このかゆなべは、命令されると、欲しいだけおかゆを作りつづけます。しかし、少女のお母さんが、おかゆを作るのをやめさせる命令の言葉を忘れてしまったために、町じゅうがおかゆであふれてしまうというユニークなお話です。

グリム童話は全部あわせて200編以上もありますが、このお話はその中でも最も短い部類に入ります。そんな短編をこのような作品に仕上げたのは、まさに、再話したべラ・サウスゲイトと画家のロバート・ラムレイの功績です。特に、ストーリーとは関係なくたくさんの場面に、ねずみをはじめうさぎ、小鳥などの小動物を登場させて、子どもたちを楽しませる気くばりは、単調になりがちなこのお話を、実に味わい深いものにしてくれています。

暮らしが豊かになって、ひもじさを体験することがほとんどない現在、いくらでもおかゆを作りつづけるかゆなべが、「なんとすばらしいものだろう」 という実感は、日本の子どもたちにはないかもしれません。しかし、今や世界の人口のおよそ3分の1が飢餓状態にあるといいます。そういう人たちを思いやる気持、それに比べて自分たちの豊かさに感謝する気持を、このような作品を通して話し合っていきたいものです。

投稿日:2006年01月13日(金) 09:44

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)