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国際理解はなぜ必要か

「いずみ書房」では、ポケット絵本シリーズの第2期「こども科学図書館」を刊行した1978年4月から「いずみ通信」という社内報を毎月発行し、主として全国の第一線で活躍する営業マンに会社の方針を伝えたり、相互のコミュニケーションをはかるなど、組織を維持するための努力をし続けてきた。「子どもワールド図書館」を刊行した1980年当時、このシリーズの刊行意図を「いずみ通信」で伝えた。記述内容に今の時代にそぐわない部分もあるが、基本的な趣旨にブレはないので、何回かに分けて採録してみよう。

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今日ほど、国際理解の必要な時代はないといわれています。それは、いったいどういう理由からなのでしょう。

私たちが毎日生活しているところは、日本の国のある一部で、世界全体からみれば限られたほんの小さな地域にすぎません。しかし、この地球上には160を越える国があって、45億人もの人々が、それぞれの生活を営んでいます。これらの人々も、むかしは他の国、他の地方の人々とは交わることもなく、自分たちだけで暮らしていたといってよいでしょう。

しかし、いまの世の中では、世界中の国々が、それぞれお互いに深い結びつきをもっています。ちょっと身のまわりを見わたしても、パンの原料となる小麦、あるいは砂糖、綿や羊毛など、たくさんのものが海を越えた遠い国から輸入されています。工業に欠くことのできない石油をほぼ100%輸入していることは広く知られていますが、食料でさえも50%以上も輸入に頼っているのが現実です。

卑近な例でいうなら、日本独特の料理である天ぷらソバをみてみましょう。ソバの原料となるソバ粉の大部分は、カナダやブラジル、中国からの輸入です。つゆの味をつける醤油の原料となる大豆はアメリカなどから、天ぷらのコロモとなる小麦はアメリカやカナダからやってきます。さらに薬味のトウガラシも中国からの輸入だし、エビもまた北太平洋やインド洋からとれたものが大部分といったように、その原料はほとんど日本国内だけでは手に入らないというのが実情なのです。

いっぽう、日本で作られた自動車やカラーテレビ、時代の最先端をゆくビデオテレビ、織ものや機械類がどんどん外国に輸出されています。お隣りの韓国や中国、東南アジアの国々をはじめ、日本とちょうど地球の反対側にある南アメリカや、独立して間もないアフリカの国々の人々が日本製の織ものをまとい、トランジスターに耳を傾け、子どもたちもまた日本製のオモチャで遊んでいるのです。計算に弱いといわれたヨーロッパ人が、日本製の電卓を使ってテキパキとさばいていることを耳にすることは、愉快なことでさえあります。 

外国との結びつきは、こうした品物ばかりではありません。外国のすすんだ科学やすぐれた芸術などは、わたしたちの生活をどれほど豊かなものにしてくれているか計りしれません。似たようなことは世界のどんな国についてもいえることで、政治や経済のしくみ、発展の程度に大きな違いはあっても、それらを乗りこえて協力しあわねばならない理由はそんなところにもあります。

ところが、国際情勢に目を向けると、昔ながらに国と国との利害がはげしく衝突し、いまだに戦火の絶え間がなく、今朝もテレビがアメリカの対イラン国交断絶という暗いニュースを伝えています。悲惨な二度の世界大戦を経験してきた世界の人々は、かりそめにも三度目の世界大戦などあってはならぬことと深く自戒し、平和を求める声も高まってはいます。しかし、火種は世界の至るところに存在しているというのが現状です。核兵器やミサイルのように前二回の大戦当時とは、比較にならないくらい兵器の発達した現在、たとえばアメリカは現在、広島に落とされた原爆の61万5000発分をこえる核兵器を持ち、ソビエトはそれにもまさる規模の核兵器を持っているだろうといわれています。万が一、世界大戦がおころうものなら、今度こそ間違いなく人類滅亡をまぬがれません。

つまり、世界の平和が維持されるための第1条件が国際理解ということだといえましょう。平和であるからこそ国々との間の貿易が可能になり、日々の生活が可能になるのです。自分ひとりのカラに閉じこもることなく、世界の国々について広い認識と理解を持つこと、それこそが世界平和の出発点となるはずです。

投稿日:2005年09月28日(水) 11:18

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)