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誤解されている日本

前日に続き、「子どもワールド図書館」の刊行意図 (1980年当時) 3回目を採録してみよう。

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第二次世界大戦に敗れて打ちのめされた日本人には、進駐軍の何もかもが別世界のようでした。私自身も小中学生の頃、アメリカの兵隊たちが口にするチューインガムやチョコレートを、あこがれの目でみていたことを思いだします。洋画にみる欧米人のくらしぶりはまさにこの世のパラダイスでした。

それから35年以上経過した今日、まさに様相は一変しました。世界のあらゆる嗜好品を満喫し、日本の自動車などは世界の市場を支配しようとしています。そのためアメリカやヨーロッパでは、日本車等の流入を食いとめようと躍起になり、日本はもうけすぎだとあからさまに不平をいったりしています。しかし、そんな高い工業力はよく知られるようにはなっても、いったい日本人はどんな生活をしているのかというと、依然としてナゾの国のようです。それは、たとえば次のような教科書の記述にあらわれています。

日本の食事は米と魚がおもであり、ときどきさつまいもやあわがその代用とされる。肉を食べる家庭は少ない。(アメリカ・小学校用教科書)/日本人の大部分は村人で、アイヌ、黄色モンゴルらの子孫である。天皇は日本の支配者としての性格のほかに、神聖な方として民衆の信仰の対象になっている。(レバノン・中学生用)/道路はまだよくない。人々は電車か自転車または歩いて旅行する。(カナダ・高校生用)/日本人はほとんどまくらを使わない。ときどき低い丸い木の台をまくら代わりに使う。(スェーデン・小学生用)/日本でもっとも広く信仰されている宗教は、シントイズムという仏教である。シントイズムは日本の国教で、シントとは神々の道を意味する……。ゾウニ――米で作った一種の甘い焼きがし(イタリア・高校生用)/子どもたちは6年間の義務教育を受けるが、その後は学校に行かない。というのは高等学校へ行く余裕かないからだ。(アメリカ・中学用)…… 等など。
 
上述のような記述の説明についている写真やさし絵も、むかしの中国ともつかない着物を着た女性が田植えをしている姿だったり、日本の代表的な女性の写真が芸者だったり、左手の指が6本もある豊臣秀吉の肖像画 (説明にもそうある)、足袋のことなのか2本指のストッキングでゲタをはいている姿(ソビエトの絵本)など。こうしたあやまりは教科書ばかりでなく、アメリカやイギリスなどの先進国の百科事典にも、日本を誤解させるタネはたくさんころがっています。たとえば、フグは、自殺するために食べる。/力士は、何代にもわたって相撲とりを職業とする人。/足袋は、婦人用もめんのストッキングで指が10本ある……。

キリがないのでこの辺にしておきますが、昔は日本というと「フジヤマ、芸者、さくら」というイメージでした。ところが最近になって、急に外国の日本人観も変わりはじめました。むしろ公害とかモーレツ会社員といった方が評判になり、「ウサギ小屋の働き中毒」といったような非難や新たな誤解のタネを生みだしています。

投稿日:2005年09月30日(金) 11:34

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)