私は、今後「いずみ書房の販売組織」をどういう仕組みにすればよいかと、自分なりに構想してみた。J・チェーンのように取扱商品が30点近くもある会社なら、それなりの売り上げも期待できるだろう。ところが当社の商品は、当面「ポケット絵本」のみである。
W氏ほどのセールス力があるなら、一人でも1ヶ月に50〜80セットほど販売できるだろうから、当社の絵本だけで充分生活できるにちがいない。しかし、全巻予約(十集分)をとり、毎月一集ずつ配本・集金する方法では、手間と時間ばかりかかって、どう考えても生計を立てるというわけにはいくまい。
家庭の主婦が、暇な時間を利用して、生計の足し程度の収入を得るというようなものなら良いかもしれない。でもそれでは売り上げも知れているし、全国組織を作るなど夢物語である。J・チェーンの加盟店の「ポケット絵本」の売り方というのは、私の営業してきた方法と大差なく、毎月配本・集金をすることで、顧客と親密になれるという利点はあるものの、生計は他の商品の売り上げがあるからやっていけているのが現実である。
そのころ、オリエントファイナンスやセントラルファイナンスといった信販会社が、販売会社に所属するセールスマンが顧客と交わしたショッピングクレジット契約を審査の上に買い取り、集金業務をすべて代行、手数料を差し引いて販売会社へ立替払いするという仕組みが急速に普及しはじめていた。
私は、販売組織を全国的に広げるには、これを利用しなくては無理だと考え、近くの信販会社の支店に口座の開設を要請した。口座は、それほど時間や手間がかからず、ほどなく開設することができた。しかし、現在ではどの信販会社のどの支店でも全国のオーダーの審査が可能だが、当時は支店の営業地域というのが決まっていて、ごく狭い地域のオーダーでなくては審査を受付けてくれなかった。