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全巻一括納品、分割払が不可欠

私は、今後「いずみ書房の販売組織」をどういう仕組みにすればよいかと、自分なりに構想してみた。J・チェーンのように取扱商品が30点近くもある会社なら、それなりの売り上げも期待できるだろう。ところが当社の商品は、当面「ポケット絵本」のみである。

W氏ほどのセールス力があるなら、一人でも1ヶ月に50〜80セットほど販売できるだろうから、当社の絵本だけで充分生活できるにちがいない。しかし、全巻予約(十集分)をとり、毎月一集ずつ配本・集金する方法では、手間と時間ばかりかかって、どう考えても生計を立てるというわけにはいくまい。

家庭の主婦が、暇な時間を利用して、生計の足し程度の収入を得るというようなものなら良いかもしれない。でもそれでは売り上げも知れているし、全国組織を作るなど夢物語である。J・チェーンの加盟店の「ポケット絵本」の売り方というのは、私の営業してきた方法と大差なく、毎月配本・集金をすることで、顧客と親密になれるという利点はあるものの、生計は他の商品の売り上げがあるからやっていけているのが現実である。

そのころ、オリエントファイナンスやセントラルファイナンスといった信販会社が、販売会社に所属するセールスマンが顧客と交わしたショッピングクレジット契約を審査の上に買い取り、集金業務をすべて代行、手数料を差し引いて販売会社へ立替払いするという仕組みが急速に普及しはじめていた。

私は、販売組織を全国的に広げるには、これを利用しなくては無理だと考え、近くの信販会社の支店に口座の開設を要請した。口座は、それほど時間や手間がかからず、ほどなく開設することができた。しかし、現在ではどの信販会社のどの支店でも全国のオーダーの審査が可能だが、当時は支店の営業地域というのが決まっていて、ごく狭い地域のオーダーでなくては審査を受付けてくれなかった。

投稿日:2005年08月01日(月) 09:39

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)