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子育てと絵本の役割

拠点長会の席上で語った内容の第3回目。

子どもと、知的なあるいは情緒的な会話を行うことが、とても大きな教育効果をもたらすことは充分にわかっていても、いざそういう会話を行おうという段階になると、ほとんどのお母さんは、自分がどんなに無力であるかを知るに違いありません。そのための適切な教材の第一は、誰が何といおうと絵本です。

絵本という教材がないと、おかあさんは昔ばなしをしてあげることも、動物、乗り物、植物等について豊かな話をしてあげることも、語りあうこともできません。つまり、この教材なしでは、教育的話題をみつけようとする段階で、たちまち行き詰まってしまいます。

絵本があれば、ただのお母さんは、たちまち万能の教師に変身することができます。しつけ的なテーマ、科学的なテーマ、音楽や美術など芸術的なテーマ、世界の国ぐにのお話、有名な人のお話、何でも話題にすることができます。しかも、お母さんというのは、わが子の個性、性格、能力、体調、気分を世界一よく知っている人ですから、絵本に描かれているテーマについて、どんな言葉づかいをすればよいのか、どのくらいのテンポで話せばいいのか、どんな歌いかたをすれば喜ぶか、どんな演出をすれば効果的か、よく心得ています。つまり、おかあさんだからこそ、わが子の理想的マンツーマン教育ができるのです。

このように考えてまいりますと、絵本というのは子どものための教材というより、おかあさんがわが子にマンツーマン教育を実施するための、おかあさんのために作られた教材と考えた方が、現実にそくしていると判断してもよいのではないでしょうか。

投稿日:2005年11月22日(火) 09:46

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)