拠点長会の席上で語った内容の第3回目。
子どもと、知的なあるいは情緒的な会話を行うことが、とても大きな教育効果をもたらすことは充分にわかっていても、いざそういう会話を行おうという段階になると、ほとんどのお母さんは、自分がどんなに無力であるかを知るに違いありません。そのための適切な教材の第一は、誰が何といおうと絵本です。
絵本という教材がないと、おかあさんは昔ばなしをしてあげることも、動物、乗り物、植物等について豊かな話をしてあげることも、語りあうこともできません。つまり、この教材なしでは、教育的話題をみつけようとする段階で、たちまち行き詰まってしまいます。
絵本があれば、ただのお母さんは、たちまち万能の教師に変身することができます。しつけ的なテーマ、科学的なテーマ、音楽や美術など芸術的なテーマ、世界の国ぐにのお話、有名な人のお話、何でも話題にすることができます。しかも、お母さんというのは、わが子の個性、性格、能力、体調、気分を世界一よく知っている人ですから、絵本に描かれているテーマについて、どんな言葉づかいをすればよいのか、どのくらいのテンポで話せばいいのか、どんな歌いかたをすれば喜ぶか、どんな演出をすれば効果的か、よく心得ています。つまり、おかあさんだからこそ、わが子の理想的マンツーマン教育ができるのです。
このように考えてまいりますと、絵本というのは子どものための教材というより、おかあさんがわが子にマンツーマン教育を実施するための、おかあさんのために作られた教材と考えた方が、現実にそくしていると判断してもよいのではないでしょうか。