拠点長会の席上で語った内容の第5回目。
音楽の先生はそのあと「しょうじょうじのたぬきばやし」 の話をしてくれました。雨情は歌の取材のために、千葉県木更津市の郊外にある証誠寺をおとずれたとき、住職から寺につたわる伝説を聞いたそうです。
むかし、三味線の大変じょうずなおしょうさんがいて、ある秋の夜、おしょうさんがいつものように三味線をひいていると、お寺の庭になんびきものたぬきが集まってきた。やがて、三味線に合わせながら、たぬきたちは力いっぱいお腹をたたいて楽しい宵をすごした。こんなことが何日も続いたある夜、おしょうさんがいくら待ってもたぬきたちが出て来ない。心配になったおしょうさんが庭を探してみると、なんといつもみんなに声をかけていたリーダー役のたぬきが、お腹に穴をあけて死んでいるのが見つかった。かわいそうに思ったおしょうさんは、お寺の庭にたぬきのお墓を作って暖かく葬った……、こんなお話でした。
雨情はこの話に大変感銘して、この伝説を歌にしようと考えました。そして出来たのが「しょうじょうじのたぬきばやし」なんだそうです。音楽の先生から歌が出来上がったいきさつを聞いていなかったら、「しょうじょうじのたぬきばやし」 も単なるコミカルな童謡くらいの印象しかなかったでしょう。それが、30年近く経った今もはっきり覚えているわけです。