拠点長会の席上で語った内容の第4回目。
「みんなのおんがくかい」 が、他の「いずみ文庫」(ポケット絵本シリーズ)とは異質のシリーズではないということを申し上げたいと思います。むしろ、「みんなのおんがくかい」 を基本に「童話」「科学」「ワールド」「伝記」すべてに結びつけ、組み合わせることのできる教材だということです。その理由は、あとでお話します。
「みんなのおんがくかい」 の最大の特長は、歌の心をわが子に語って聞かせるためのアドバイスや解説がついているといってよいでしょう。こうした試みはこれまで、どこの出版社もやっていません。なぜ、こんな労の多いことをしたのかを、ちょっとふれたいと思います。
私がまだ小学生だったころのこと、音楽の先生が野口雨情のことを話してくれました。野口雨情というひとは、大正7年ごろからおこった新しい子どもの歌運動の中心になって、数々の名曲を作詞されたかたですね。「おれは河原の枯れすすき〜」という「船頭小唄」を作った人です。「みんなのおんがくかい」にも、「あめふりおつきさん」「こがねむし」「あおいめのにんぎよう」「しゃぼんだま」「あのまちこのまち」「しょうじょうじのたぬきばやし」「七つのこ」「うさぎのダンス」「たわらはごろごろ」「あかいくつ」全部で10曲収録しています。
今でもはっきりおぼえているのですが、「しゃぼんだま」 という歌は、雨情の幼くして死んだわが子への鎮魂歌として作られたものだと、先生はしみじみ語ってくれました。2番の歌詞に 「しゃぼんだまきえた/とばずにきえた/うまれてすぐに/こわれてきえた」 とありますが、生まれたばかりのわが子が、飛ばずに消えた「しゃぼんだま」のようにはかない人生だった。その悲しみをこの歌に託したと聞いて以来、この歌を耳にしたり歌ったりするたびに、目頭があつくなります。このように、雨情の童謡には、一貫して曲全体にやさしさと、愛の心が流れているといってよいかと思います。