今や世界的な電機メーカーとなった「ソニー」が、1976年に家庭用ビデオテレビを発売した。定価228,000円は、決して安い価格ではなかったが、100万円以上もした業務用に比べると格段に安くなったことから、マスコミでの報道や、莫大な広告費を投入してのPRも過熱していた。そのソニーが、当社の「ポケット絵本」をビデオソフトにしたいと、ソニー傘下のプロダクションを通じて要請してきたのである。絵本の原画を貸し出すだけで、すべてプロダクションの負担で制作するという。うまくいけば当社の宣伝になるかもしれないと直感し、この話に乗ってみることにした。
「ポケット絵本」40巻のうち、ビデオ絵本に制作しやすい10巻が選定され、プロのナレーターの朗読にあわせ、原画の絵をアップにしたりロングにしたり、動かしたりと、いろいろ変化をつけながらうまく作品に仕上げてくれた。全5巻、1巻に2作品、視聴時間各30分として完成したが、販売するとなると1巻の定価が15,000円になる。とても個人が購入できる価格ではなく、幼稚園などに働きかけ、「100名以上の予約がとれたら寄贈します」といったキャンペーンを打ち出したが、ほとんど計画倒れに終わってしまった。
しかし、無名の出版社の絵本シリーズが、ビデオ絵本になったということは結構大きなインパクトとなり、いずみ書房のフランチャイズ販売組織拡大の要因になったことは確かである。