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幼稚園ルートへの挑戦

「せかいの童話シリーズ」の販売先として、多くの人が考えることは、幼稚園へ売りこむということだった。当然、私もそう考えて行動をおこした。園に顔のきく知り合いに紹介をもらい、朝から夜遅くまで営業活動に専心した。全巻予約申込書を用意し、園を通じて園児のいる家庭へ配布してもらえないかと頼みこむのだ。やがて紹介された園も底を尽き、片端から飛び込んでいったが、残念ながら成果はほとんど得られない。当時から、幼稚園市場への営業は競争が激しかった。というのも、年少、年中、年長の園児向けに「月刊絵本」を刊行する出版社が福音館書店、学研、ひかりのくに、チャイルド社、フレーベル館など数社あり、それぞれが読み物絵本、科学絵本の2種類、計6種類を刊行し、そのシェアの奪い合いを演じていたのだ。そういう市場に、ネームバリューのない、しかも全巻予約といっても、全10集の計画のうち1集だけしか刊行していない会社の絵本など、どんなに内容がよくても案内することは出来ないという。無理もない。次回の第2集を刊行できる見通しすら全くたっていないのだから。

投稿日:2005年06月09日(木) 12:43

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)