幼稚園がだめなら保育園に販路を求めようと、まず公立の保育園のいくつかに当たってみた。幼稚園とちがって、保育園の保母さんの何人かは興味を示してくれて、個人的に予約をくれる人が少しずつ現れたが、公立保育園では原則として園児にあっせんすることは禁止されているという。そのため、大量予約というわけにはいかない。
そんなある日、定員が8人という無認可保育園へ飛びこんだ。園長と、園児を預けにきた母親がいて、私の手にした見本を見るや叫んだ。「まあ、可愛い絵本ね、ステキだわ。すぐに予約する、私も・・・」ということで、あっという間に2セットの予約がとれた。後日全員に案内してくれて、結果的にこの小さな園から7セットの予約をもらうことが出来たのである。苦戦続きの日々だったので、この出会いはどんなに私を力づけてくれたことだろう。そうなのだ、小さな規模の保育園は、幼稚園と違って、絵本や教材を売り込まれるということが皆無に近かったのだ。気をよくした私は、この日を機会に、数人から20〜30人規模の小さな私立保育園や、無認可保育園に飛び込んで、次々に予約者の数を積み重ねていった。2ヶ月ほどで300名を越え、口コミや、人に頼んでいたところからの成果も加えると、3ヶ月目には500名ほどになり、先行きにわずかな光が見えはじめてきた。
このころまでに、T銀行を通じ支払手形を発行することが可能になったため、勇気を出して、第2集を刊行することに踏み切った。しかし、各1万セット製造、数千セット販売してようやく利益が出る定価設定をしていたので、とても一息つくことは許されない。しかも、手形を発行した以上、何が何でも期日までに資金を用意しなくては破綻してしまう。胃の痛くなるような毎日が続いていた。