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すべりこみセーフ

樫村社長に200万円を受領したことを報告し、月末までに残りいくら用意すればよいかとたずねると、あと500万円はほしいという。「ポケット絵本シリーズ」は、J・チェーン分として納品した以外に、いずみ書房の奥付分を各集3000セットほど制作していた。これは、以前、保育園を中心に予約をとった人たち用にとっておいた分であった。J・チェーンと取引を開始したころからは、新たな開拓をほとんどしなかった。というのも、私が開拓した園へJ・チェーンの加盟店が訪れることがよくあり、すでに入っているのを知った加盟店が本部に苦情をいうことが続いたからだ。また、5月に全巻完成したことを知った幼稚園への納入業者のいくつかは、当社と直接取引したいといってきたが、J・チェーンの加盟店に迷惑をかけてはいけないと、この申し出もすべてことわってきた。

しかし、もはやそんな悠長なことをいっている場合ではない。会社がなくなるかどうかの瀬戸際なのだから。待機中の2、3日間に、ある程度の打ち合わせを済ませておいた幼稚園納入業者のいくつかを訪問し、納品時に手形をもらえるなら取引しましょうと、強気に交渉した。3社ばかりが当方の提案に応じてくれ、それぞれの手形を入手したのは1976年8月29日のことだった。この手形をすぐに銀行に持込んで割引してもらい、まさにすべこみセーフ、破綻をまぬがれたのである。

投稿日:2005年06月30日(木) 11:42

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)