1987年に刊行した英国レディバード社とのタイアップ企画第3弾、「レディバードブックス特選100点セット」のうち、作品内容を紹介してみよう。今回は、アイルランドの作家オスカー・ワイルド(1856-1900)の「幸福の王子他」。ここには、タイトルの「幸福の王子」のほかに、「星の子」と「若い王様」が収録されている。どの本でもよいので、内容の一部を知りたいという声に応え、「幸福の王子」の全文(14ページ分)を4回に分けて紹介してみよう。
● 「幸福の王子」全文1
昔あるところに、1人の王子がいました、その王子は、欲しいものは何でも手に入ったので、悲しむことも泣くこともありませんでした。それでこの王子は、「幸福の王子」とよばれていました。ああ、けれどもある日、王子は死んでしまったのです。国じゅうの人びとはたいへん悲しみ、王子のことを忘れないようにと像を作りました。像はなまりでできていましたが、王子にたいへんよく似ていました、ただ、目だけは青い宝石で作られ、服は金で作られていたのです。人びとはそれをみんなが見ることができるように、町のまん中の高い柱の上にのせました。
さて、その国は冬がたいへん寒く、毎年秋になると、ツバメたちは、日が照っている暖かいところへ飛んでいくのでした。ところが今年は、1羽の小さなツバメだけ、他のツバメたちといっしょに飛んでいかなかったのです。そのツバメは、湖のまわりの、アシが生えているところに残っていました。アシは背が高く、美しく、ツバメはそのアシのうちの1本を好きになってしまったので、アシと離れて飛びたつことができませんでした。