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「伝記」で 「生き方」 を考えさせる

10年以上にわたり刊行をし続けた「月刊 日本読書クラブ」の人気コーナー「本を読むことは、なぜ素晴しいのでしょうか」からの採録、第58回目。
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● 「エジソン」 を読んで
私が、この本を読んで、いちばん強く考えさせられたのは、努力することの大切さです。私は今までにも、いろいろな伝記を読みましたが、びんぼうや不自由な体にも負けずがんばりぬいた人が多かったと思います。人からりっぱな人だといわれる人は、ふつうの人の何倍も努力しているんだなと思いました。それに、苦しいことに出会っても、けっして負けない強い心があると思いました。(3年生)
一気にエジソンの伝記を読んで、私は 「すばらしい人、エジソン」 と、つぶやきました。なぜかと考えたら、最後までやり通すエジソンの忍耐力と迫力、それが私たち人間にとって、どんなに大切な生き方であるかということがひしひしと感じられたからです。(3年生)
● 「ワシントン」 を読んで
「すべての人は、生まれながらにしてびょうどうである」 とさけんだワシントンは、ほんとうにすばらしい人だったと思います。わたしも、きょうからワシントンをすこしでも見ならい、やさしい心と、あいと、強いゆう気をもって生きていきたいと思います。(2年生)
わたしは、ワシントンのでんきをよんで、ワシントンは、正直な人だ、心のやさしい人だ、ゆう気のある人だという三つのことに感心しました。むずかしいかもしれませんが、わたしも、この三つの心をたいせつにしていこうと思います。(2年生)
● 「ヘレンケラー」 を読んで
わたしは、今までくるしいことからにげて、いつもできるだけらくなほうがいいと思っていました。でも、これからは、どんな小さなことでもいい、人のためになることやしんせつなことを、ゆうきをだして、やっていくつもりです。(2年生)
わたしは、いままで、しかられたときとか、じぶんのおもいどおりにならないとき、わたしはふこうな人げんだとおもってきました。それが、ヘレンケラーの、でんきをよんで、いっぺんにかわりました。(2年生)
へレンケラーは、自分の苦しみをのりこえて他人を愛しました。わたしにそれができるでしょうか。人間はみな兄弟なのですから、助けあい、はげましあって、どんな苦しみものりこえられる強い信念をもって生きていかなければ、と思います。(5年生)
● 「ナイチンゲール」 を読んで
一度決心したら自分の信念をつらぬき通したナイチンゲールの偉大さには、強く胸をうたれました。私の母にもナイチンゲールににているところがあります。他人の言動にまどわされず、自分でこうと決めたら、どんなに苦しくてもやり通します。私に 「どんなことでも最後まで責任をもってやり通しなさい」 と言っています。きびしい母だと思っていましたが、ナイチンゲールの伝記を読むうちに、母の心が少しずつわかってきました。(4年生)
以上は、伝記を読んだ子どもたちの感想文の一部です。このほか、野口英世、宮沢賢治、リンカーン、キュリー夫人などを読んでの感想文を見ても、それらの伝記から子どもたちが学びとっているものは、信念をもって強く生きることの大切さと、大きな愛の心で生きることのすばらしさです。
子どもたちは、伝記をとおして初めて、大きく生きた偉人たちの心にふれることができます。そして、すばらしい生き方に感動しながら、人間が人間らしく生きることの意味や 「ぼくもこのように生きて行きたい」 「わたしも、このように生きてみたい」 などと自分の生き方について考えます。
他人から、口で 「このように生きよ」 などと言われるのではなく、自分の力で、自分の心で、自分の生き方を考えます。また、さまざまな人の伝記を読むうちに、人間にはいろいろな生き方があることを知り、自分自身で自分の生きる道を考えるようになります。
教訓としてではなく、一つの読みものとして、子どもに伝記 (マンガではなく、文字で書かれたもの) を与える。──これは、今の子どもたちが一般的に主体性に乏しいことを思うとき、もっと重視されていいことです。
なお、いずみ書房のホームページにあるオンラインブック「せかい伝記図書館」には、上に紹介した「エジソン」「ワシントン」「ナイチンゲール」を読むことができます。

投稿日:2006年08月09日(水) 09:36

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)