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ぐりとぐら

10年以上にわたり刊行をし続けた「月刊 日本読書クラブ」の人気コーナー「本を読むことは、なぜ素晴しいのでしょうか」からの採録、第48回目。

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● 柔軟な想像力と豊かな感性を育むための絶好の絵本

この絵本「ぐりとぐら」(なかがわ りえこ作・おおむら ゆりこ絵 福音館書店刊)の内容は、次のとおりです。

ぼくらの なまえは ぐりと ぐら このよで いちばん すきなのは おりょうりすることたべること ぐりぐら ぐり ぐら──お料理をすることと食べることが大好きな野ねずみのぐりとぐらが、森の奥ですばらしいものを見つけました。大きな大きなたまごです。
ぐりとぐらは、この森の中で大きなカステラを作ることにしました。大きなかまどを作って、大きなフライパンを火にかけて……。やがて、いいにおいが流れて、ライオンもゾウも小さなカメも森じゅうの動物たちが集まってきました。
みんなで食べたカステラのおいしかったこと。ぐりとぐらは、たまごのからで車を作って、また、歌をうたいながら帰って行きました。

もう何十年も前から読みつがれている3〜5歳向きの絵本です。
ぼくらの なまえは……に始まるリズミカルな書きだしに耳をかたむけているうちに、大きなたまごの発見によって、子どもは空想の楽しさのなかへ誘いこまれていきます。

現実の生活の中で、これほど大きなたまごを想像することなどありません。まして、こんな大きなたまごがあるなどとも思いません。
ところが、物語の世界へとけこむうちに、そんな大きなたまごは、きっとどこかにあるように思えてきます。

3〜5歳の子どもは、たぶんカステラなど作ったことはないはずです。
しかし、ぐりとぐらが、さとうを入れ牛乳を入れて、やがて、大きなフライパンいっぱいの黄色いカステラができあがっていく過程では、子ども自身もカスデラ作りを楽しんでしまいます。カステラがやけるときの、おいしそうなにおいさえ、思いうかべながら……。

大きい動物も小さい動物も、森じゅうの動物たちが仲よく集まることなど想像もつかないことです。まして、カステラをみんなで分けあって食べるなんて、思いもつかないことです。
ところが、子どもは 「ぼくも、あの動物たちといっしょにカステラを食べることができたら、どんなに楽しいだろうなあ」 などと思いながら、ひとときを楽しみます。
動物たちの幸せな気持ちといっしょに、子どもも幸せな気分を味わいます。

子どもは、おとなが考える以上に柔軟な想像力と豊かな感性をもっています。しかし、それは 「本来、もっている」 というものであって、それを育てなければ、想像する力も、ものを豊かに感じとる力も、芽をふきださないままに終わってしまいます。
現実の生活の中でそれを育てることは、やさしいようで、なかなかむずかしいものです。

物語は、現実とは違うもうひとつの世界を描き、子どもはその世界にふれると、しらずしらずのうちにひきこまれていきます。そうして子ども自身によって豊かな感性を育てていくことができるのです。

なおこの絵本は、「えほんナビ」のホームページでも紹介されています。
http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=49

投稿日:2006年07月14日(金) 09:18

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)