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「経済学の先駆」 太宰春台

今日5月30日は、江戸時代中期の儒学者で、荻生徂徠に学び、やがて独自の体系を築いた太宰春台(だざい しゅんだい)が、1747年に亡くなった日です。

1680年、信濃国(長野県)飯田藩士の子として飯田城下生まれた春台(本名・純)は、9歳のとき父が過失によって罷免されたことで江戸へ出て学問を修めると、1694年に、但馬(兵庫県)出石藩の松平氏に仕えました。その間儒学者に師事して朱子学を学ぶものの、1700年に許可なく官職を辞したことで藩主の怒りをかって他家へ仕えることを禁止されたため、その後10年間畿内を放浪しながら、漢詩・天文学・地学・朱子学などを学びました。

1711年に江戸へもどると、下総生実(おいみ)藩に仕官しながら、1713年放浪時代に知り合った荻生徂徠門下の安藤東野の紹介で徂徠の門に入ると、ほどなく学力と見識が認められて、服部南郭とともに「古文辞学派」(徂徠を祖とする儒学の一派)の双璧といわれるようになりました。1715年には、藩を辞して本格的に研究・執筆活動に入ると、江戸小石川に塾を開いて多くの門人を集めて指導しながら、亡くなるまでにたくさんの書を著しています。

とくに有名なのは、『経済録』(10巻)と『経済録拾遺』で、初めて「経済」という用語を使い、経済学を「経世済民」の学問と位置づけ、国産開発・専売政策を積極的に強調する理論は、世界にも通用する先進性を持ち、のちの本田利明や海保青陵らの政治経済説の先駆をなすと評価されています。

いっぽう、古注の校訂にこつこつと取り組み、『論語古訓』(10巻)『論語古訓外伝』(20巻)『史書古伝』(34巻)などを著しています。おおらかで豪放的な性格だった徂徠に対し、春台はきまじめだったことからか、『聖学問答』などでは徂徠の学説を受けつぎながらも、より道徳的な行いを重視しています。また春台は、将軍を「日本国王」とし、鎌倉・室町・江戸の3時代は、それぞれに国家が異なると主張したことでも知られています。


「5月30日にあった主なできごと」

1265年 ダンテ誕生…イタリアの都市国家フィレンツェ出身の詩人で、彼岸の国の旅を描いた叙事詩『神曲』や詩集『新生』などを著し、ルネサンスの先駆者といわれるダンテが生まれました。

1431年 ジャンヌダルク死去…「百年戦争」 でイギリス軍からフランスを救った少女ジャンヌ・ダルクが 「魔女」 の汚名をきせられ、処刑されました。
投稿日:2014年05月30日(金) 05:45

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)