児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ Top >  今日はこんな日 >  『かいじゅうたちのいるところ』 のセンダック

『かいじゅうたちのいるところ』 のセンダック

今日5月8日は、ロングセラー絵本『かいじゅうたちのいるところ』『まよなかのだいどころ』など80点以上ものファンタジー絵本を著し、現代絵本界を代表するアメリカのセンダックが、2012年に亡くなった日です。

1928年、ニューヨークのブルックリンにあるユダヤ人コミュニティーの中で生まれたモーリス・センダックは、翌年にウォール街で株が大暴落し、大不況が起きたことで父が友人と経営していた会社は倒産、センダックの家族は貧困の底においやられました。子どものころのセンダックは病弱で友だちもなく、母親のいる台所が唯一の遊び場所で、絵を書くのが大好きでした。

高等時代に抜群の画才で頭角をあらわすと、卒業後にマンハッタンの玩具店でウィンドウを装飾する職人の仕事につきました。やがてからくり人形を考案したことで、玩具店主に紹介されてハーパーランド・ブラザーズの名編集者と知り合い、1951年にマルセル・エーメの童話『おにごっこ物語』などに挿絵を描くようになりました。1952年に発表された『あなはほるもの おっこちるとこ』はニューヨーク・タイムズ年間最優秀図書に選ばれています。

1956年に『ケニーのまど』を出版してからは、文・絵ともすべて自作の絵本を出版するようになり、1964年に『かいじゅうたちのいるところ』を発表すると、その評価をめぐって大論争がおこりましたが、全米で年間最優秀作品に授与されるコールデコット賞を翌年に受賞し、世界的なベストセラーとなりました。これまでに、2千万部以上といわれるこの絵本は、つぎのような内容です。

オオカミのぬいぐみを着たマックスは、ある日いたずらをして母親に叱られます。「この かいじゅう!」とおこる母親に「おまえをたべちゃうぞ」と大暴れしたため、おしおきとして夕食抜きで寝室に放り込まれます。やがて暗くなるとマックスは家出をし、ヨットで長い航海のすえ、不思議な森のある島に着きます。そこはかいじゅうたちのいるところで、かいじゅうたちは恐ろしい顔つきをしていたものの、マックスは彼らのギラギラ光る恐ろしい目を見すえることができたため、「かいじゅうの王様」になり、かいじゅうたちと大騒ぎして楽しいひとときをすごします。心が解放されて家が恋しくなって再び航海して部屋にもどると、そこにはほっかほかの夕食が置かれていました……。

センダックは生涯に80点以上の作品を残していますが、自作品には他に『まよなかのだいどころ』『ロージーちゃんのひみつ』『まどのそとのそのまたむこう』などがあり、絵だけの作品に『こぐまのくまくん』『シャーロットのしろい馬』『そんなときなんていう?』などがあります。1970年には、子どもの心とすがたをいきいきと描き出す絵本作家として、国際アンデルセン賞を受賞しています。


「5月8日にあった主なできごと」

1615年 大坂夏の陣…豊臣秀頼の生母で、秀吉亡きあと秀頼の後見人として豊臣家一族を盛りたてた淀君が、家康のはかりごとに屈し、「大坂夏の陣」に敗れて秀頼とともに自害しました。豊臣家が滅亡した日でもあります。

1794年 ラボアジェ死去…従来の化学理論を次々と正し、実験で証明したことで「近代化学の父」と称されたフランスの科学者ラボアジェが、ある時期に徴税請負人をしていたことがわかり、ギロチンで処刑されました。

1859年 デュナン誕生…負傷兵を敵味方を問わずに助ける「国際赤十字」のしくみをこしらえたスイスの社会事業家デュナンが生れました。この誕生日を記念して、5月8日は「世界赤十字デー」として、1948年から国際的な記念日となっています。
投稿日:2014年05月08日(木) 05:04

 <  前の記事 「大坂の陣」 と真田幸村  |  トップページ  |  次の記事 「名君」 前田綱紀  > 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://mt.izumishobo.co.jp/mt-tb.cgi/3324

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

         

2015年01月

        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

月別アーカイブ

 

Mobile

児童英語・図書出版社 社長のこだわりプログmobile ver. http://mt.izumishobo.co.jp/plugins/Mobile/mtm.cgi?b=6

プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)