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心なごませる自分の音楽をもとう

「日本読書クラブカタログ(本の価値と楽しみ)」の第5章「音楽」の項を紹介してみよう。

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● 音楽はすべての民族がもっている
音楽はどのようにして、おこったのか……これについては、はっきりしたことはわかりません。しかし、いろいろな資料から、つぎのようなことが、考えられています。
■ むかしの人が、小鳥のさえずりや動物の鳴き声をまねしているうちに始まった。
■ 石器をつくるときのリズムや、人が歩くときのリズムから始まった。
■ 雨ごいなど、みんなの強い願いをあらわそうとしたときに始まった。
■ 集団で力をあわせて働くとき、とくに力仕事をするときの、かけ声から始まった。
■ 支配者などが、おおぜいの人の前で語るときの、ことばの強弱や高低から始まった。
■ 遠くに音を伝えるために音をだしたものから始まった。
このほか、人間は、川の流れの音や風の音など、自然のなかの音からいつのまにか、リズムをもつようになったのだろうとも、考えられています。
さて、以上のようなことから考えると。音楽は、人間のもっとも素朴な生活のなかから生まれたのだ、ということがよくわかります。つまり、このことは、もともと人間はからだのなかにリズムを求め、リズムを楽しむものをもっているということであり、ここにこそ、音楽がすべての人に愛されるゆえんがあるのでしょう。
世界を見わたしても、音楽をもたない、音楽を愛さない民族がひとつでもあるでしょうか。そんな民族はありません。たとえ、他に文化らしいものはなにひとつもたなくても、音楽だけは、その民族から生まれたものを、必ずもっています。音楽は、それほどに、根深く人間とむすびついたものなのです。人びとが音楽を奏で、音楽を口ずさみ、音楽に涙し、音楽にうかれるのは、あまりにも、とうぜんのことといえるのではないでしょうか。

● 英才教育のためのものではない
ところで、最近、母と子を対象にした童謡集や名曲集が多く出されて、人気を集めていますが、その刊行意図をみると、つぎのようなことが、かかげられています。
「ゼロ歳児から、美しい音楽をとおして、豊かな情操をはぐくむために」「音感教育によって、感性豊かな明るい子に育てるために」「美しい音楽の世界をとおして、子どもの夢をひろげてやるために」「音楽をとおして、母と子の心があたたかく通いあうために」「母親が、わが子に、やさしく語りかけていくてだてに」
以上をまとめてひと口にいえば、母と子で音楽を楽しみながら、子どもの心を豊かなものにしていくために、ということになるのでしょう。ゼロ歳児から幼児教育をなどといっても、文字や言葉や絵は、2歳、3歳、4歳児にならないと、まだまだ理解できません。ところが、どんな幼児も、音だけは、早くから感じとることができます。
つまり、文字や言葉はわからない幼児期でも、音(音楽) によって感性 (心に深く感じること) を育てることはできるわけであり、ここに、幼児期から美しい音楽、リズミカルな音楽に親しませる大きな価値があるのです。
そのはっきりした証拠に、母と子ども向きの音楽全集は、どれひとつとっても、「将来、音楽家をめざす子のために」 「音楽家への英才教育のために」 などとは、うたっておりません。編集・刊行のねらいは、100パーセント、すべての子どもの心の発達にプラスすることにあり、「すべての子ども」 の発達に基本的にかかわるものであるからこそ、家庭向き音楽全集の価値が大きいといえるでしょう。
なかでも、音楽カセット(最近は音楽CD)は、レコードに比べると、気軽に楽しむことができます。小型の機器があれば、いつでも、どんな場所ででも楽しむことができます。童謡であれば、歌を聞きながら、子どもがうたい、母親がうたい、母子いっしょにうたい、音楽を楽しみ童謡のメルヘンの世界にひたりながら、母と子の心をあたたかくかよいあわせる……こうした音楽全集にしかない、すばらしさといえるのではないでしょうか。

● 楽しく明るい家庭のために
童謡を中心にしたシリーズのほか、おとな向きの 「名曲全集」 「名曲アルバム」 「クラシック大全集」 なども広く愛されていますが、これも、けっして専門家向きのものではありません。
「音による芸術」 である音楽を、生活のなかで楽しむ人たちのためのものです。
美しい音楽、楽しい音楽を聞いて、心の洗われない人、心の晴れない人はいないはずです。あまりにも美しい、あまりにも悲しい音楽を耳にして、しぜんに涙があふれるのも、心にひびく 「音の芸術」 が、すばらしいものだからです。名曲やクラシックにかぎることはありません。ポピュラーソングであっても、流行歌であっても、心をなごませる 「自分の音楽」 をもつことが、たいせつなのではないでしょうか。
すべての家が 「音楽のある」 「音楽を口ずさむ」 家庭であることをのぞみたいものです。心豊かに育てたい子どものためにも……。

(日本読書クラブ推薦商品の項は省略)

投稿日:2006年03月13日(月) 13:31

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)