1983年1月に設立した「日本読書クラブ」。設立から10年後の1992年5月、公文教育研究会の発行する月刊教育情報誌「ケイパブル」に掲載された記事の後半を紹介する。
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●『月刊・日本読書クラブ』
設立と同時にクラブでは、会員配布用の機関紙『日本読書クラブ』(第1号1983年2月1日発行) を毎月出し続けて、今年5月号でちょうど通巻111号になる。B5判でわずか8ページの小冊子であるが中身は充実していて感動的な記事にあふれている。ここ数か月の継続している紙面のテーマとその内容をあげてみよう。
* その月の特選図書の紹介 (表紙)
* 「かんがえるこどもたち」(P2〜3) 読書調査や読書体験、教育現場や社会の情報などをもとにした読書についての考察。
* 「しつけ」(P4) 平常のしつけがいかに子どもの人間形成にとって大事であるかを、親子の実際の事例を紹介しながら考える。
* 「こどものほんだな」(P5) 新旧を問わず、すぐれた絵本や児童書の紹介。毎号2点。
* 「ラ・フォンテーン寓話」(P6) 寓話のジャンルを完成させたフランスの詩人ラ・フォンテーンの寓話1話とその格言。
* 「お母さんの勉強室」(P7) 子どもの作文を紹介しながら、そのよいところを考える。また敬語の正しい使い方の解説。
*「読み聞かせ」(P8) 読者の投書や見聞などをもとに、読み聞かせの方法や効果、心構え、本選びなどを紹介し、読み聞かせについて総合的に考察。
『日本読書クラブ』は、現在このようなテーマにそって、毎号編集されている。そのなかの1、2を次に紹介しよう。
● 読書で心を深める子ども
今年2月号の 「子どもは著者の心にふれながら自分の心を深めていく」 と題された記事には、「書物を読むのは、ほんとうは他人の思想や考えを学ぶためでなく、自分自身の思想を深めるためであると思います。つまり、他人の思想を通じて自分の思想を深めるのが読書の真の目的であると考えます」 という評論家澤潟久敬氏の言葉を実証する例として、小学1年生の女の子が書いた感想文が取りあげられている。
山にすむちびおにが帽子をかぶり、服を着て変装し、町の幼稚園にやってくる。そして池に落ちてびしょぬれになった子どもに自分の正体がばれるのもかまわず、服をぬいで着せてやる。おにであることがわかっていじめられるのではないかと思ったが、子どもたちにかえって歓迎されて楽しく過ごすことができたという『ちびっこちびおに』の話である。
その女の子は、この話を読みながら、なぜだろうと考えたり、どうなるだろうと心配したり、ああ、よかったと安心したりしたこと、また読み終わって、ちびおにのやさしさに感じいったことなどを素直に書いている。
記事は、この感想文を再録した上で、「子どもは、本を読むことを通して、自分の心を深めていくのです」 と、締めくくっている。
また3月号の「読み聞かせ」 には、次のような読者の事例が載っている。
東京・多摩市のある主婦が、4歳半になる子に読み聞かせを始めたところ、2歳半になる子がいつの間にか側によってきて熱心に聞くようになり、今ではその子のほうが読み聞かせを要求するようになったという。その体験から、読み聞かせは、たとえ1歳からでも早すぎないのではないかと気づいたという。
これは、まさにその通りで、母親の読み聞かせが、幼い子どもにとっていかに大きく心をふくらませてくれるものかという事例として、掲載されている。
このような記事が毎号のっている『月刊・日本読書クラブ』の年間購読料は1200円とのこと。「本を読む人を一人でも二人でもふやしていく、親子の心が通いあった家庭を1軒でも2軒でもふやしていく」 ことを目指している日本読書クラブに入会するのに、なんの入会制限もない。「誰でも気軽に入ってきてほしい」 と、編集長の酒井義夫氏はかたっている。