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生活を楽しむ知恵

「日本読書クラブカタログ(本の価値と楽しみ)」の第11章「家庭百科」の項を紹介してみよう。

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● 知らないことが多い生活の常識
1. 客にお茶とお菓子を同時にだすとき.お客に向かって、お茶は左、お菓子は右に置く。
2.今他家を訪問して辞去するとき、ざぶとんは、裏返しにする。
3.テーブルに料理をだすときは、坐っているお客の右側から。
4. 煮豆の砂糖は、早目に入れる。
5.すまし汁のしょう油は、ふっとうしたら、すぐ入れる。
6. 結婚式のときの引き出ものは、新郎新婦の両親の分は必要ない。
7. 年少者を年長者にひきあわせるときは、年長者を先に紹介してやる。
8. ねんざしたときは、ぬるま湯であたためてやるといい。
以上8問のうち、どれが正しく、どれがまちがっているのでしょう。
正解は1. ○ 2.× 3.× 4.×(よく煮えてから) 5.×(最後に入れる) 6. ○ 7.×(年少者から) 8.×(冷たい水でひやす)
さて、「社交と礼儀」「結婚生活」「美容と着付け」「健康と家庭医学」「住まいと園芸」「文字と手紙」「慶事・弔事」「妊娠・出産・育児」「家事とくらし」「料理」「日常の法律」「華道・茶道・書道」「和裁・洋裁」「編物と手芸」「趣味と旅」……。このようなことを巻別にまとめた10〜20巻の家庭百科が、いろいろと出版され、多くの家庭で利用されています。
これほど大部な家庭百科の出版は20年、30年まえまでは、あまりみられませんでした。家庭百科といえば1冊か上下2冊くらいにまとめた便覧的なものがほとんどでした。ところが最近は、その便覧的なものよりも、10巻、15巻あるいは20巻などの大部なものがよろこばれるようになったのですが、その理由の大きなものとしては (1)世帯の核家族化の進行 (2)各家庭における文化生活志向の向上があげられましょう。

● 恥をかくまえに 失敗のまえに
(1)は、祖父・祖母とは別居の核家族の家庭では、人生の先輩である年寄りから生活の知恵を学ぶすべがなくなり、そのかわりに若いお母さんたちは、しかたなく本に生活の知恵を求めるようになったのです。
「季節を楽しむ漬物のつけかた」「不意の客を迎えたときの料理のつくりかた」「着物のつくりかたと楽しみかた」「障子やふすまが破損したときの、上手なつくろいかた」「病気やけがの応急手当てのしかた」「客のもてなしかた」「他家の訪問のしかた」「慶・弔事のマナー」「日常の作法」……むかしの若い主婦は、これらのほとんどを、日頃の生活をとおして、年寄りという人生の先輩から学んできました。ところが、いまは、それを求めることはできません。とはいっても、それらの多くは、半ば常識として知っておかなければ、あるいは身につけておかなければ、実生活のなかで、恥をかくことにもなってしまいます。
この文の冒頭にかかげた8問は、いずれも知っておくことがのぞましい知識や作法の初歩的なことですが、こんなことだって、正解を知らずにまちがったまま過ごしている人が、少なくないでしょう。つまり、核家族は、新鮮で自由な家族を生みだした反面 「生活経験の浅い裸に近い家族」 を生みだしたのであり、だからこそ、自分で学ぶことが要求されているのです。

● より豊かな生活を求めて
つぎに(2)は、日本の高度経済成長のなかで、「各家庭にゆとりがでてきたこと」「主婦が家庭生活を楽しむようになったこと」「自分の人生を自分で楽しむようになったこと」 の、あらわれでしょう。このことは、出版社が家庭百科をすすめることばのなかに 「あなた自身のために」 「あなたの暮らしをいるどろために」 「ヒロインは、あなた。あなたの、しあわせの色がひろがる」 「あなたの生活に、もっと豊かな楽しみとうるおいを」……などと、うたいこまれていることで明らかです。つまり、家庭百科は主婦の 「より豊かな生活」 と各家庭の 「より豊かないとなみ」 への手助けを意図して編集されたものでもあり、だからこそ必然的に全10巻、全15巻という大部なシリーズになっているのです。

● 親・主婦・女性として
どのシリーズも、美しい色の写真、絵、図を豊富に入れ、「読んで役にたつ」 ばかりでなく、「目で見て楽しめる」 ようにも、くふうされています。子どもたちがよるこぶ動物、植物、天文などの図鑑になぞらえれば、この家庭百科は、主婦向けの家庭・生活図鑑といってもよいのかもしれません。
さて、家庭百科を買い求めたら、お気にいりの雑誌のページをめくるようにして、いつも楽しむことです。悩みや問題にぶつかったときだけページを開くというのでは、事典の価値は半減です。日常生活のなかでぶつかる悩みだって、それにぶつかって本に助けを求めるよりも、できれば、記憶できる範囲のことはあらかじめ知っておくにこしたことはないでしょう。悩みや問題には、いつ、どこで、ぶつかるかもしれないのですから。
ひとそろいの家庭百科が 「あなたの生活に、なくてはならないもの」 になることを、期待したいものです。賢く豊かな生活のための技術と常識を身につけるためにも、親として主婦として女性としての心をみがくためにも。

(日本読書クラブ推薦図書の項は省略)

投稿日:2006年03月22日(水) 09:20

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)