「日本読書クラブカタログ(本の価値と楽しみ)」の第7章「図鑑」の項を紹介してみよう。
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● ますます読まれる各種図鑑
毎日新聞社が行なっている学校読書調査の結果によると、このところ、小学生のあいだで、昆虫、動物などの図鑑類がますます人気を集めています。4年生の男子では、昆虫図鑑が 「みんなに多く読まれた本」 の2位、動物図鑑が7〜8位を占めているほどです。
たしかに、動物、昆虫、植物、鳥、魚・貝、地球、宇宙、鉄道、自動車、飛行機、人間のからだ、社会とくらし、数、ことば……などの図鑑は、子どもたちが、もっともよろこんで手にする本のひとつです。名作物語や伝記などは読まない子どもでも、図鑑類であれば、自分からすすんで楽しむ子どもも少なくありません。それは、[図鑑とは、絵や写真を主にして、ものごとを、わかりやすく説明したもの][子どもたちのなぜだろう、なぜかしらという疑問に答えたもの]だからです。
各出版社の図鑑シリーズのカタログを見ると、例外なく、つぎのようなことが大きく書かれています。
「見て、調べて、楽しみながら生きた知識が身につく」「楽しみながら正しい知識を」「見て楽しんで学習の力がつく」「子どもの興味と疑問に、むりなくこたえる」「絵本として楽しみながら、考える楽しさと、発見する感動を伝える」「自分で調べ、自分で学ぶ意欲がわく」「おそわる学習から、自ら学ぶ学習へ」「楽しみながら知識を広げ、考える力を育てる」「科学する目、科学する心を養わせる」……。
つまり、図鑑のねらいをひと口でいえば、「子どもたちに、楽しみながら事物への興味をおこさせ、知識を広げさせ、主体的に学ぶ習慣をつけさせる」 ということになるのでしょうか。
● 単なるもの知り人間ではダメ
テレビの影響をつよく受けている現代の子どもたちは、目で見て直感的に記憶する力にすぐれています。しかし、そんな記憶にもとづく知識は、広いかわりに浅いという、難点をもっています。「もの知り人間は多いが、ものを深く考える人間は少ない」 といわれるのが、それです。
そこで、各種の図鑑では、美しい豊富な絵・図・写真で視覚に訴えて、子どもたちに事物への興味をおこさせると同時に、興味をもったものを少しでも深く考えさせることに、大きな力がそそがれています。
たとえば、動物・昆虫図鑑にもりこまれているのは、その種類や、その姿だけではありません。「この動物、この昆虫は、こんな生活をしているのか、こんなふしぎな生き方をしているのか」 というようなことが多く解説され、子どもたちが、その 「生きもの」 に対して、命あるものへの愛情もふくめた、ほんとうの関心を抱くように、くふうされています。また、進化の歴史や自然界のふしぎさなども、やさしく説かれ、子どもたちが、たんなる観察をこえて事物を深く考えるように編集されています。
宇宙や乗りものの図鑑でも同じです。なりたち、しくみ、発達の歴史などの知識のほか、人類とのかかわりはもちろんのこと、現実の人間生活とのかかわりも解説され、子どもたちが、ものごとをはば広く考えるように構成されています。
● 学校の授業は教科書ベッタリ
要するに図鑑は、子どもたちに 「楽しませながら学ばせる」 ものです。勉強にそくしていえば、学校で習う各教科の家庭学習を、楽しくさせようとするものです。
学校における教科書べったりの授業は、子どもたちにとっては、けっして、おもしろいものではありません。そこで、戦後の日本の小・中・高等学校には、学校図書館を設置することが義務づけられ、教科書以外の資料をも使った豊かな授業がのぞまれてきました。しかし、じっさいには、つめこみ主義の学校教育におされて、そんな 「豊かな授業」 は、ほとんど実践されていません。とすれば、各家庭でこそ、すべての子どもたちに知る楽しさ、学ぶ楽しさを自ら発見させるような手だてが、積極的になされなければいけないのです。
● 豊かな資料で豊かな学習を
現在、市販されている子ども向きの図鑑は、とにかく、どれをとっても美しく、楽しく、豊かです。おとなでも、十分に楽しませてくれます。学習事典も 「子どもたちの主体的な学習」 を期待してつくられていますが、使い方によっては、図鑑は学習事典以上に 「主体的な学習」 に役だつのではないでしょうか。
とにかく、学校の授業がつめこみであればあるほど、子どもたちに、少しでも豊かな資料を提供して、「考えながら学ぶ」 習慣を身につけさせてやりたいものです。
(日本読書クラブ推薦図書の項は省略)