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執念ともいえる教材開発

家庭学習システム「セサミえいごワールド」という、完成度の高い子ども向英語教材を、無事制作し終えることができたのは、企画が持ち上がってから約2年半、まことにたくさんの人たちのねばり強い努力の賜物であった。発行元のNHKソフトウエア(現NHKエンタープライズ)のS氏を中心に、監修および編集を担当された緒方桂子さんとアシスタントの川口奈緒さん、当社の渋木国子の活躍なしでは生まれ得なかったといってよいだろう。

監修・編集を担当された緒方さんは、京都生まれ、ニューヨーク州立大学を卒業したバイリンガルで、文章を書いたり話したりすることでは日本語よりも英語のほうが得意というほどの使い手。帰国後、Yという大手英語教室立ち上げの頃の教材開発やしくみをこしらえたあと当時の同僚川口さんと独立、イラストレーター、翻訳家、ライターとして活躍。各種英会話教材のプログラムの開発、かずかずの日米共同プロジェクトに参画する一方、いずみ書房が販売を担当した、NHKソフトウエア発行「NHK英語であそぼ/ハローキッズプログラム」の総合監修・編集に当たられた方である。幼児英語教室の教師という現場を20年近く経験してきた川口さんとのコンビは見事で、まさに生きた教材づくりに、その経験と実力を存分に発揮できたに違いない。

当社の営業責任者だった渋木国子は、フジテレビの人気教育番組だった「ひらけ! ポンキッキ」教育セット、「らくらく英検英語くらぶ」、「NHK英語であそぼ/ハローキッズプログラム」など、幼児教育教材や子ども向け英語教材の開発から販売までを、いずみ書房創業期から30年近くも長い間たずさわってきた。二人の子どもを育ててきた経験を生かし、子育てまっ最中の若い母親と同じ目線に立ちながら、子育ての秘訣をわかりやすい言葉でしっかり話をし、的確にアドバイスすることで信頼を得てきた。電話ではあるが、おそらく、渋木ほどたくさんの母親と対話をした人はいないのではないだろうか。だから、そんな母親たちの教材に対する要望がよくわかるのだ。この「セサミえいごワールド」への思い入れも人一倍、これまでのどの教材にも負けない究極の教材にしたいと企画・編集にたずさわってきた。こだわる理由は、もうひとつあった。実は渋木が、2000年の春に、思っても見なかった「肺がん」に罹っていたことが判明したのだ。そのショックはどんなに大きなものだったか知れない。しかし、渋木は左肺下葉の切除の手術後、すぐに職場復帰して、この教材の編集に専念をはじめた。再発が確認されてからも、入院を伴う抗がん剤治療を一切拒否して、仕事にかかりきりになっていった。特に印刷物の校正に関しての厳しさは、鬼気迫るものさえあった。こうして2002年10月、完成につなげることができたのである。それから2年足らずの2004年9月に死去したが、この教材の編集に精魂こめたことは、仕事が大好きだった人の最後で、最大の仕事、まさに命をかけた大事業だったといえるだろう。

投稿日:2005年07月12日(火) 11:49

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)