児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ Top >  セサミえいごワールド >  セサミストリートのバリアフリー精神

セサミストリートのバリアフリー精神

世界中の子どもや親たちに大人気の「セサミストリート」は、1969年、アメリカで誕生した教育番組である。アメリカの1960年代というのは、政治的にも経済的、文化的にも充実した時代で、世界の超大国として自信と活気に満ちあふれていた。しかし、一方では、黒人やヒスパニッシュらに対する人種差別や貧困があり、しいたげられた人々による犯罪が多発し、大きな社会問題になっていた。そんな犯罪者たちの子どもの多くは学校に通っておらず、そのため文字は読めず、数もかぞえられない、物事の善悪や社会的なルールも教えられていない、という現実があった。当時、そんな子どもたちの最大の楽しみは、テレビを見ることだった。

「テレビを通して、学校へ通わない子どもたちを教育しよう。子どもたちをテレビにくぎづけにしてしまうほど、楽しい教育番組をこしらえて…」。こうして、フォードやカーネギーといった大企業が資金を出し合って財団を作り、「テレビによる子どもの学校」をめざして制作されたのが「セサミストリート」である。アメリカを代表する教育心理学者や言語学者たちが集まり、討論に討論を重ねて練り上げたカリキュラムを基本にしている。セサミストリートに登場するマペットたちは、肌の色もさまざま、容姿や大小も千差万別である。怖いものの代表でもあるドラキュラ伯を模した数を教えるカウント伯、ごみ箱に住むあまのじゃくのオスカーなど、肌の色の違いや、障害、容姿やものの考え方の違いを越え、あらゆる人々が安心して快適に生活できる「バリアフリー」の精神を、子どもたちにごく自然な形で教えていきたいという意図があるからなのだろう。

ちなみに「セサミ=sesame」とは、胡麻(ごま)のことである。アラビアンナイトの話に出てくる「アリババと40人の盗賊」の「ひらけ! ごま(Open, sesame!)」から名づけられた。この呪文で宝物が隠してある洞窟の扉が開かれるように、セサミストリートを通じて、子どもたちが[新しい世界や知識の扉を開いて欲しい]、そして[平和で豊かな社会を愛する心を育んでほしい]という願いがこめられているのだという。
1970年にはじまったフジテレビの人気教育番組「ひらけ! ポンキッキ」も、この「セサミストリート」をお手本に制作したと、プロデューサーの一人は語っている。

投稿日:2005年07月04日(月) 11:14

 <  前の記事 雑誌広告リニューアル  |  トップページ  |  次の記事 デジタル化したトーキングリピーター  > 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://mt.izumishobo.co.jp/mt-tb.cgi/798

         

2014年08月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

月別アーカイブ

 

Mobile

児童英語・図書出版社 社長のこだわりプログmobile ver. http://mt.izumishobo.co.jp/plugins/Mobile/mtm.cgi?b=6

プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)