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デジタル化したトーキングリピーター

9679c8a1.JPGトーキングカードという磁気の貼られたイラスト付カードを、リピーターという機械に通すと、スイッチが入ってカードが動きだし、5、6秒間声が聞こえ、終わると自動的にスイッチが切れるというシステムがある。世界のソニーを育て上げたことで有名な井深大氏が、1970年代に開発、販売を開始した。幼児向け英語教材にうってつけだということで、以来、さまざまな会社がハードやソフトを開発し、幼児英語の分野では、20年以上もの長い間、子どもをもつ母親らに支持されてきた。しかし、この磁気を貼ったカードには、次のような欠点がある。

(1) ゆっくり流れるテープの音を再生するため音質に限界がある。
(2) 何度も通すうちに、音のひずみが生じる。
(3) モーターを使ってカードを移動させるために、モーター音が雑音として聞こえる。
(4) 動くカードを、子どもが待てずに引っぱると、音が消えてテープに傷がつく。

セサミえいごワールド」の総合セットを企画する際、当方の希望は、映像に登場する基本的な単語や会話表現を、トーキングカード型のリピートカードにすることを提案した。しかし、従来型のリピートカードの欠点を解消したハードを開発しない限り、セサミワークショップの許容基準外になり、承認が得られないことがわかった。

当社は、大手電機メーカーS社の協力を得て、1年半もの時間をかけ、デジタル化したトーキングリピーターの開発に成功した。この機械の最大の特長は、イラスト入りカードをハードの溝に落とすだけで、センサーが瞬時に音を読み取るため、カードをすぐに引き出してもクリアな音を再生する点にある。音声は、コンパクトフラッシュという35×40×3mmの小さなチップに収められ、CD並みの高音質を実現した。さらに、ネイティブの音声と対話を楽しんだり、ネイティブのお手本を真似ながら自分の声を録音したりして遊べるし、カードを裏返して溝に落としても表と同様に読み取ることができるという、セサミワークショップのお墨付きがもらえたすぐれものである。わずか650gという軽量化にも成功し、その機能及びデザインは、2003年のグッドデザイン賞にも輝いた。

投稿日:2005年07月05日(火) 10:31

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)