「セサミストリート」が、テレビによる「子どもの学校」をめざした教育番組であることは、先に記述したが、「セサミえいごワールド」の映像も、同じような独創的なカリキュラムを基に制作されている。1話15分、全52話は、日本語も英語も話せる小学生の主人公ティンゴが、ニューヨークに住む女子高校生ニッキの家に1年間ホームステイし、さまざまな異文化交流をしながら成長していく楽しいストーリーとして展開される。
第1話では、ニッキの家についたティンゴがニッキの家族を紹介され、お父さん、お母さん、兄さん、妹と、「はじめまして Nice to meet you.」 というあいさつ、ノックの音に「どなた? Who is it? 」と、何度も同じことを繰り返すことにより、大切な会話表現がしっかり身につく工夫をしていることがよくわかる。また、とりあげるテーマも、1〜8話は「親類や家族の友達」、9〜16話は「動物やペット」、17〜24話は「食事・食べ物」、25〜32話は「天気・季節・時間」33〜40話は「友達」、41〜48話は「おもちゃ・ゲーム・スポーツ」というように、行動範囲が少しずつ広がり、ティンゴはたくさんの体験を重ねることによって社会性を身につけていく。49〜52話は「思い出」として、1年間をふりかえることにより、過去形をさりげなく教えるという具合である。この映像は、日本で作られる多くの教材のように、ゆっくりとしたスピードで話されていない。まさに、ナチュラルスピードで生きた英語が話される。そのため、親向けにセリフのすべてを、ガイドブック7冊にして対訳で用意した。子どもたちの疑問にしっかり答えてほしいためである。さらに、各エピソードの合間に歌われるたくさんの歌は、子どもたちばかりでなく大人も充分楽しませてくれる。
この映像をくりかえし視聴することにより、実際に使われる状況の中で単語や表現に親しむ「導入」がなされることになる。次のステップとして「リピートカード」により、映像で親しんだ単語や表現を、自分でいってみたり、聞きなおしたり、会話のやりとりをしながら「練習」をする。仕上げは、ピクチャーディクショナリーやアクティビティブック、書きかたボードなどで、どのくらい単語や表現が身についたかをゲーム感覚で「確認」する。
「セサミえいこワールド」のねらいは、この「導入」→「練習」→「確認」作業を何度もくりかえすことにより、子どもたちが、日本で生活しながら日本語と同じように生きた英語が話せるようになること、いわゆるバイリンガルとなることを目的としたプログラムなのである。